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不運で律儀でタフで愉快な葉村晶さん、ぜひ一杯飲みましょう。

不運で律儀でタフで愉快な葉村晶さん、ぜひ一杯飲みましょう。

文:辻 真先 (作家)

『不穏な眠り』(若竹七海 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 もともとぼくは小説の王道とは距離をおいて、シナリオ修業から物書き生活をスタートした。そのあげく覇道というよりけもの道でしかないマンガ・アニメの脚本にいたったのだが、どの道でも常時いわれたのは「キャラクターの創造」である。小説風にいうなら「人間を描け」である。ところがぼくは子供のころから、お話作りに精出していた。登場人物が筋書きに奉仕しているから、ドラマに波風を立たせても読者は親身になって読んでくれない。その悪循環が今もつづいているという自覚がある。

 だが葉村シリーズはそうではない。本書で活躍する彼女の舞台は広い。ミステリとしての趣向も多岐にわたっている。

 刑務所帰りの女と密輸(ラスト二行の冷徹さよ)、想像を絶する怪アートと謎の資金(コントラストも凄まじいが、そのとめどない風呂敷の広がり具合)、鉄道ミステリと古書オークション(ぼくも本は好きだがこんな修羅場は知らない。ドサクサ?に紛れて辻の名を出してくださり感謝です)、欠陥老朽団地やら老人ホームやら(ぼくの仕事部屋は熱海のシニアマンションですが、土砂崩れで送水管が吹っ飛び半月ほど断水中。ひとごとではありません)、手を替え品を替えながら一貫して変わらぬ魅力を放ちつづけるのは、軸となる葉村晶の存在感ゆえに違いない。

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文春文庫
不穏な眠り
若竹七海

定価:715円(税込)発売日:2019年12月05日

文春文庫
錆びた滑車
若竹七海

定価:880円(税込)発売日:2018年08月03日

文春文庫
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若竹七海

定価:759円(税込)発売日:2016年08月04日

文春文庫
さよならの手口
若竹七海

定価:935円(税込)発売日:2014年11月07日

文春文庫
悪いうさぎ
若竹七海

定価:858円(税込)発売日:2004年07月09日

文春文庫
依頼人は死んだ
若竹七海

定価:770円(税込)発売日:2003年06月10日

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