
- 2019.12.23
- 書評
不運で律儀でタフで愉快な葉村晶さん、ぜひ一杯飲みましょう。
文:辻 真先 (作家)
『不穏な眠り』(若竹七海 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
はじめこそおいしい仕事、あるいはラクな注文のはずだったのに、どういう賽(さい)の目が出たのか、アラアラという間もなく悲惨な業務遂行の羽目になる連作、高見の見物である読者としては申し訳ないけれど、つい可笑しくなる。なのにこのヒロインは、ぶうぶう不満を垂れながらでも、必ず料金以上の仕事をしてのけるから頭が下がる。
世の不均衡不平等不合理を百も承知で、その間隙(かんげき)を縫い股ぐらをくぐってスポンサーを満足させ、ときにはそれさえ足蹴(あしげ)にして自分の美意識に奉仕する。寺院の池で泥まみれになろうと(『水沫隠れの日々』参照のこと)、幽霊ビルの夜警で凍えそうになろうと(『新春のラビリンス』参照のこと)、探偵の矜持を守りぬく。ムリにかっこつけてるのではない、それが彼女の自然な生きざまだから、全身これ名ダンディだ。
ね、機会があったら、ぜひ一杯飲もうじゃないか、葉村さん。
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