私が『万葉集』の英訳に着手したのは令和元年の八月十五日のことだった。この日は日本では第二次世界大戦の終戦の日とされている。そして、最初の草稿が完成したのは今上天皇の即位礼の日だった。
この仕事に取り組んでいる間、私は常に、第二次世界大戦と新しい令和の時代について思いを巡らせていた。今年の八月はとても暑かったので、お盆休みには山中湖に滞在していたのだが、ちょうど台風による暴風雨に見舞われてしまった。ようやく雨が止み、これでもう大丈夫と思ったのも束の間、再び嵐が起こり、激しい雨が窓に打ち付けてきた。ほとんど外出することもできなかったのだが、雨続きだったおかげで涼しくて過ごしやすく、集中して仕事に取り組むことができた。夜、近くの温泉に行くと、そこは夏合宿で山中湖を訪れた大学生たちであふれていた。彼らはふざけてじゃれ合い、楽しそうに笑い、おしゃべりに興じていた。彼らと言葉をかわしながら、私は日本という国について、そして終戦記念日と『万葉集』の関係について、考え始めていた。彼ら若い日本人たちにとって、また新しい時代の日本にとって、『万葉集』はどのような意味を持つのだろうか、と。
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