2014年に刊行された服部真里子さんの第一歌集『行け広野へと』(本阿弥書店刊)。今年6月には3刷も刊行された本書は、現代歌人協会賞を受賞するなど歌壇での評価が高いのはもちろんのこと、短歌を普段読まない読者にも愛されている。電子書籍ユーザーでもあるという服部さんの協力のもと、9月7日には文藝春秋から『行け広野へと』の電子書籍版の配信が開始された。10月には第二歌集『遠くの敵や硝子を』も刊行しますます話題をあつめている服部さんに話を聞いた。
――服部さんの第一歌集『行け広野へと』が電子書籍化されました。服部さんは普段から電子書籍を利用されているそうですね。
服部 はい。小説もそうですし、歌集も電子書籍で読みますね。このあいだ、初めてドストエフスキーを読んでみようと、電子書籍版を購入したんです。分厚い本でもかさばらないのがいいですよね。電子書籍ならば在庫切れの心配もありませんし。それは絶版の多い歌集にとっては嬉しいことです。
――『行け広野へと』には服部さんが短歌を始めた19歳から27歳までに詠まれた全289首が掲載されています。短歌を始めたのは学生時代ですか?
服部 2006年です。大学一年生で、早稲田短歌会から新歓のビラをもらったのがきっかけでした。自作の短歌が一首あれば「歌会」(※参加者が自作の短歌を持ち寄り、たがいに批評をしあう会)というものに参加できる、歌会では参加者が歌にコメントをくれると聞いて、「あ、コメント欲しいな」と思って参加しました(笑)。57577の31音くらいならなんとかなるかと思って。それまでほとんど短歌というものを読んだことがなく、百人一首くらいのイメージしかありませんでした。最初は季語が必要だと思っていたくらいです(笑)。
『行け広野へと』に収録されている歌のなかでもっとも古いものは「海を見よ その平らかさたよりなさ 僕はかたちを持ってしまった」という歌で、これは短歌を始めて2か月後に詠んだものですね。
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