昼間 自分が四十二歳と年をとっただけかもしれないんですが、今回の候補作品は川越さんが私の一歳下、あとの作者の方は皆さん三十代と非常にお若いので嬉しくなりました。
平井 うちのお店は百貨店の中に入っていて、ご年配のお客様も大勢ご来店いただいております。もともと時代小説は売れていたんですが、これまでは葉室麟さんと佐伯泰英さんの人気が圧倒的でした。それがここへ来て、今村翔吾さんの書きおろし時代文庫「羽州ぼろ鳶組」シリーズ(祥伝社文庫)が、新刊が出るたびにどんどん売れていきます。
私自身が実はほとんど時代小説を読んでこなかったこともあり、中学生や高校生もなかなか読みづらいだろうと勝手に思っていたんですけど、これだけ若い作家の方が出てくるということは、多分、若い頃から歴史時代ものに親しまれていたんですよね。そう考えると読者開拓の余地はまだまだあるのかも。
市川 小説を読むというよりは、若い人たちはテレビゲームの影響が大きいんですよ。たとえば『信長の野望』をやっていると、メジャーじゃない二線級なんだけれど、やたらに強くて気になる、津軽為信や蒲生氏郷、宇喜多直家といった武将も人気です。彼らを掘り下げた小説はこれまでほとんどなかったですが、これからの世代の作家さんが書いていくでしょうね。
僕が書店でアルバイトをはじめた十年前は、司馬太郎さんの新選組作品を中心に幕末ものも売れていたけど、最近は戦国時代一強。織田信長や武田信玄といった有名武将以外に関心が持たれるようになったことで、さらに盛り上がってきています。
阿久津 うちのお店も結構、年配のお客様が多いんですが、時代小説文庫でいちばん売れているのは、坂井希久子さんの「居酒屋ぜんや」シリーズ(ハルキ文庫)ですね。このシリーズのファンになったお客様で、今度は坂井さんの現代小説に流れてくださることも結構多い。今村さんもそうですが、時代ものという枠組みにとらわれずに幅広いジャンルで書いて下さる作家さんも有り難いです。
昼間 ハードカバーがなかなか売れない現状はあるんですけど、歴史時代ものを書かれる若い方がどんどん出てきているのは、実はこの分野には充分なポテンシャルがあるということ。私たちも売り方を考えて、もっとちゃんと頑張らなければという気持ちになりました!
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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