「ニューズウィーク日本版」のサイトで「31カ国、16万人を対象に行われた調査で、16歳の時に家に本が何冊あったかが、大人になってからの読み書き能力、数学の基礎知識、ITスキルの高さに比例することが明らかになった」という記事(二○一八年十月十八日)を読んで、ある種のデータは・呪い・になるのになあと思ってしまった。家に本がなくても図書館や読書好きの友人から借りて読む子もいれば、家に万巻の書がありながら一顧だにしない子だっている。一人ひとりの子ども、すべてにそれぞれの事情があり、それぞれの本との関わり方がある。でも、データはそんなことを考慮してはくれない。
果から因という応報の物語を紡ぎだし、因から果という呪いの物語をひねり出す。人間はどんなことにも物語を見いだし、しかし、その多くがステレオタイプであることに気づかないまま受け入れてしまいがちな生きものだ。そんな自覚があるから、わたしは小説を手に取る。世間一般のマスの感覚だけを頼りにしたありきたりな物語ではなく、登場人物に固有の物語を丁寧に描く小説を、読む。その一冊が、山崎ナオコーラの『美しい距離』なのである。
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