家入 すごいですね……。だって、それっていろんな経験ができると同時に、肩書のない生活をするっていうことですよね。しかも、二十九歳って女性にとってはひとつの転機を迎えるタイミングだし、何かに押しつぶされそうになった瞬間とかはないですか?
千早 あったと思うんですけど……でも、それは小説家になるという目標に対してのものですね。さっき家入さんが「女の子として生きることを避けてきた」とおっしゃったけど、私も一緒で、図らずも結婚はしましたが、何歳までに結婚を、とか子供を、とかその種の願望がなかったし、女性としてこうあらねばみたいな気持ちがなかったので、そういうストレスはありませんでした。
家入 それはいいですね。こうあらねばとか、ひとと比べてっていう視点が入ってくるとつらくなるけど、自分のこと、そんなに決めつけなくてもいいと思うんです。そもそもひとって一生変わり続けるものだと思うから。見た目が一緒だからって、いつでも同じ魂が入ってるとは限らないと思いませんか。
千早 いつでも同じ魂……無理ですね。
家入 だって今日こうやって千早さんに会って、何も変わらないわけがないんですよ。毎日、更新されていく。たぶん、私はどこかの時点で、そうやって変わっていくことを受け入れられるようになったんだと思うんです。一時期、みんなが想像してる家入レオと、自分が抱いてるイメージがかけ離れてるような気がして、苦しいときもあって。でも、私から見た私が私だったらいいじゃんって吹っ切れた。そしたら、百人が百通りの家入レオ像をもってくれるって素敵なことだなと感じるようになって、どんどん新しい自分になっても大丈夫だと思えるようになった。
千早 うんうん。そのときどきに必ず、その時だからこそ表現できるものってありますしね。私だって、十代で作家デビューしていたら、それはそれでその時しか書けなかったことがあったのかもしれないし。
家入 どの道も正解なんですよ、きっと。成功の形って様々ですから。
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