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<対談>家入レオ×千早茜「嘘がない自分を受け入れたから、見えてきた」

<対談>家入レオ×千早茜「嘘がない自分を受け入れたから、見えてきた」

別冊文藝春秋

電子版30号

出典 : #別冊文藝春秋
ジャンル : #小説

自分を毎日、更新したい

家入 私、思うんですけど、気持ちに嘘がないほうがぜったい強いんですよ。私自身、自分のことを受け入れてから変わった。「自分は、自分のことしか考えられない病なんだ」ってことを受け留めたから、本当の意味で他者を大切にするっていうことが何なのかわかるようになったし、そのほうがひとともちゃんと関係が結べるとわかった。

千早 創作に力を入れたいならなおさらですよね。誰もが一日は二十四時間しかないし、自分が何を大事にしたいのかということは知っておいたほうがいい。

家入 千早さんの優先順位はどうでしょう。一日の時間はどんなふうに使ってますか。ご執筆は自宅で?

千早 自宅ですね。まず午前のうちにその日食べるものの仕込みや家事をして、昼過ぎから夜まで黙々と書く。こうやって東京に出てきているときはたくさんひとにも会いますが、京都にいるときは本当に粛々と暮らしてます。年齢とともに生活を大事にしたいという気持ちも強くなってきたので余計に。

家入 その気持ちわかります! だって、生活のなかで感じることがあるからこそ、書きたいとか歌いたいとか思うことも生まれるわけで。だから歌を二時間歌うんだったら、珈琲を飲んだり、お花屋さんに季節の花を買いに行ったりする時間が同じだけ必要なんです。そうじゃないと、作品をつくるということ自体が削られていく。でも集中していると、ずっと家で作業しちゃうから、本当に人に会わないんですよね……。

千早 わざわざ会おうとしないと、会わないですよね。

家入 ときどき、なんだか世の中から取り残されてるようだなって感じることがあります。夕暮れ時にひとりで歌詞を書いていたりなんかすると。でも、その作業こそが世の中とつながるためには必要で、面白いなあ、この孤独の先にしかひととつながる道はないんだなって感じます。

千早 やっぱり孤独ですよね。私もデビューしたばかりの頃、これはちょっと刺激がなさすぎるのではと思って、ものづくりをする人たちがそれぞれにスペースを借りているビルに「出勤する」というスタイルを取っていたことがあります。小説家はみんなどこか孤独で、その気持ちに馴染める人だけが続けられるんでしょうね。それにしても、不思議です。ミュージシャンの方は一体どんなふうに音楽をつくられるんでしょう!? 家入さんは曲を書くときどうされてますか?

家入 わかりやすいのは、ギターでコードにのせながら……ですけど、そういう誰がどう見ても「つくってる」という状態じゃなくても、たとえばこうやって珈琲を飲んだり、ケーキを食べたりしながらもうつくってるんですよ、頭の中で。ああ、これを使おう、これを書こうって常に思ってる。だからずっとお仕事してるし、ずっと遊んでる。

千早 一緒ですね、私も。たとえば『男ともだち』を連載してた時は、何をしていても、ああ、神名だったらいまこう感じるなとかずっと考えてました。

別冊文藝春秋からうまれた本

文春文庫
西洋菓子店プティ・フール
千早茜

定価:748円(税込)発売日:2019年02月08日

文春文庫
男ともだち
千早茜

定価:781円(税込)発売日:2017年03月10日

電子書籍
別冊文藝春秋 電子版30号(2020年3月号)
文藝春秋・編

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