家入 そうなんですよね。身近な、たとえばマネージャーさんなんかも、最初は「いまから旅行? そんなことしてて大丈夫かな」とか心配してたと思うんですけど、私としては「大丈夫! この歌の主人公と私は四六時中一緒にいるんだから」って。それを最後に歌に落とし込むときに、家に帰って机と椅子とパソコンが必要なだけで。
千早 その瞬間のことが知りたい……まずどこから始めるんでしょうか。
家入 料理と一緒ですね。とりあえずフライパンがあるから油を引いてみるか、みたいなことから。
千早 えええ、料理をそんなふうにつくったことない……。
家入 あら(笑)? 千早さんはどんなふうにお料理を?
千早 食べたいもののイメージを固めて、そこに近づくための器具を選ぶところから始めます。こういう食感をだしたかったらフライパンじゃなくて蒸し器だな、みたいに。初めてつくるものはレシピを何種類か見て、このパターンとこっちのパターンの違いは何だ? ということをまず検討する。
家入 すごい、科学者みたいですね。
千早 父がばりばりの理系だったので、その影響かもしれません。
家入 うちは、母が料理系のお仕事をしていたこともあって、ハンバーグとかカレーライスみたいに名前がついているものじゃなくて、家にあるもの……たとえば「冷蔵庫にトマトとキャベツがあるから今日はこれだね」という感じでごはんがつくられていたんです。
千早 ああ、それは本当に料理が上手な方だ……。
家入 だから私も、料理はもちろん、曲とか歌詞とか、自分流でいいじゃないかと思っています。ケーキを食べて千早さんと私が同じように「おいしい」と思っても、その実感は全然違うでしょうし。だから料理もわざと実験っぽくつくったりしますね。
千早 あー、それはわかります。そういう挑戦は楽しいですよね。私もむかしパティシエみたいなことをしていて、いろんな食材を組み合わせては唸っていました。
家入 パティシエ!? 千早さん、作家デビューされる前はいったいどんな生活を……?
千早 フリーターですね。二十九歳で作家になるって決めていたので、経験を買おうと、タイプの違う飲食店をかけもちしたり、病院とか美術館とか役所とか、大学を出てからひたすらいろんなところで働いていました。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。