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げいさい 短期集中連載 最終回

文: 会田 誠

文學界5月号

「文學界 5月号」(文藝春秋 編)

5

 模擬店を出ると外は暗かった。建前としては芸術祭は終了していたので、外の照明は落とされていたのだ。しかしまだ終了した雰囲気からはほど遠く、模擬店から漏れる光をバックに、人々の黒いシルエットが行き交い、ひしめき合っていた。規則を無視した時間に突入したことが、よけいに祝祭感を盛り上げているかのようだった。

 石油ストーブを焚いた模擬店内はたぶん酸欠気味だったのだろう――山の冷えこんだ空気が格別に美味かった。飲んだのはひたすらビールだったが、僕はしたたかに酔っていた。夕方までヒリヒリ感じていた疎外感は、正当な理由で解消されたわけではないが、アルコールの強引な力によってうやむやになっていた。

「みんなは彫刻科の展示室で飲み直すみたいだけど……そっちはあとで合流してもいいから、ちょっとさ、一緒にクラブハウスに寄ってかない?」

 と高村が言うので、それがどういうところか知りもしないで「どこでもいいよ、行こうか!」と応ずるほど、僕は上機嫌だった。

「ちょっと待ってて」と言い置いて、高村は人ごみをかき分け、いったんどこかに消えた。しばらくして佐知子とアリアスの手首を掴んで戻ってきた。そして僕の手首を取り、有無を言わさず佐知子と手を繋がせた。

 佐知子とは四ヶ月ぶりの接触なので緊張した。嫌がってないかチラリと顔を覗くと、佐知子は微笑んで、軽くきゅっと手を握り返してきた。『ついでにこちらも』という感じで、高村はアリアスの手を握ろうとして、手の甲をぺシリと叩かれる、息の合った一連の小芝居もあった。

「クラブハウスはすぐそこだから」

 先導する高村とアリアスの背中をぼんやり眺めながら、僕は佐知子と手を繋いだまま暗い道を歩いた。

文學界 5月号

2020年5月号 / 4月7日発売
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