またまた八咫烏シリーズの短編を書きました。
出版業界では「長編と短編は使う筋肉が違う」といった言い方をよく聞きます。ここしばらく、私はシリーズ新作長編である『楽園の烏』を文字通りヒイヒイ言いながら書いてばかりいたのですが、短時間でラストまでいける短編執筆には久しく感じていない爽快感を味わえました。小説を仕事として書くのは辛い時もありますが、それを含めてやっぱり楽しいものですね。
それにしても、シリーズ外伝というものは読者の皆さんへの届け方が難しいので、何を書くかにはいつも頭を悩ませております。
今年文庫化される『八咫烏外伝 烏百花 蛍の章』は、小説誌である「オール讀物」に寄稿した原稿をまとめたものです。収録した中で最初に書いた「しのぶひと」は2016年7月のものになります。ちょうどシリーズ5作目の『玉依姫』を発表したあたりですね。ところが、夏と冬、年2回というスローペースで発表した作品を単行本としてまとめたのは、2018年5月です。この頃には6作目『弥栄の烏』が出ていたので、「オール讀物」で読んで下さっていた方と単行本で初めてそれを読まれた方の間では、短編の持つ意味が大きく変わってしまいました。
特に先述した「しのぶひと」では、某護衛の某姫君への恋心を匂わせていました。作者としては「しのぶひと」→『弥栄の烏』という順番で書いているので自然な形で描写したつもりだったのですが、当然、読者さんの全員が「オール讀物」を読んでいるわけではありません。『弥栄の烏』の出版にあたっては、苦肉の策として編集さん達が「しのぶひと」のリーフレットを作って無料配布してくれたりもしたのですが、単行本派の方には恋愛描写が唐突に感じられたであろうことを思うと、非常に悔しく感じます。
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