書評

超能力者でありながら、昭和の香り漂う人間味溢れる登場人物たちが魅力的

文: 小橋 めぐみ (女優)

『増山超能力師大戦争』(誉田 哲也)

『増山超能力師大戦争』(誉田 哲也)

 目の前で、ある超能力者に、スプーン曲げを見せてもらったことがある。みんなで静かに見守っていると、手も触れていないのにスプーンの柄から先が、ぽとりと落ちた。

「すごいすごい!」

 と興奮気味に言うと、

「いや、自分は全然すごくない。イチローのほうがよっぽどすごい」

 と、その超能力者は冷静に言った。

「『超能力』というネーミングがよくない、『超』がついてるから、すごいと思われがちだけれど違う言葉のほうがよかった。スプーン曲げができても、生きていくうえで何の役にも立たない」と。

 じゃあ、どういう言葉がいいんだろうね? と、その時みんなで話しあったのだけれど、これだ! というものは出てこなかった。やっぱり「超能力」という響き以上にぴったりくるものはなかった。手も触れずにスプーンを曲げるなんて、努力の延長線上にはないからだ。

 と、ここで、いや、そもそもそのスプーン曲げ、本物なの? 手品じゃないの? という突っ込みをしたくなった方もいるだろうけれど、その議論はここでは置いておこう。そのほうが何倍も『増山超能力師大戦争』の面白さを、味わうことができる。

増山超能力師大戦争誉田哲也

定価:本体740円+税発売日:2020年06月09日


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