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オール讀物新人賞への道 受賞の極意 木下昌輝

オール讀物新人賞への道 受賞の極意 木下昌輝

十回以上推敲を重ねた

 小説として初めての応募にもかかわらず、オール讀物新人賞は二次選考まで通過。そこで「来年こそは!」と意を固める一方、ほかの公募の賞にも応募は次々にしました。現代もので短篇だけではなく長篇も書きあげましたが、なかなか二次選考より先には進めませんでした。一年間で駄目だったら就職活動をするつもりでしたし、背水の陣で挑んだ二度目のオール讀物新人賞の題材に選んだのが、昔やっていた古武道を調べていくうちに出会った宇喜多直家です。

 いろいろと史料は揃えたんですが、いざ書く段階になったら締め切りまで一週間くらいしかなくて、最終的には夜遅くまで開いている大阪中央郵便局まで車で駆けつけて投函した記憶があります。時間がない中で仕上げた自覚があるので、その前日は十回以上、推敲に推敲を重ねたつもりです。

 もうひとつ気をつけたのは、僕は司馬遼太郎さんの歴史小説が昔から好きだったのですが、あえてそれと真逆な書き方をすることでした。司馬さんはエッセイに「ビルの屋上から下の人々を見下ろしてその様子を描く」と書かれているのですが、だったら僕は下にいる目線で人々を書こう、と。そのためには五感をフルに使った表現、匂いや音ができるだけ生々しく感じられるように努めて書きあげたのが、初めての歴史小説「宇喜多の捨て嫁」でした。

【次ページ 編集者の没に苦しむ日々】

単行本
宇喜多の捨て嫁
木下昌輝

定価:1,870円(税込)発売日:2014年10月27日

プレゼント
  • 『ナースの卯月に視えるもの2』秋谷りんこ・著

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