本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
オール讀物新人賞への道 受賞の極意 坂井希久子

オール讀物新人賞への道 受賞の極意 坂井希久子

職業に注目が集まって……

 その頃に書いていたのは恋愛ものが多かったですね。擬人化小説にも凝っていて、トイレの落書きが主人公の小説も書いたりしていました。受賞作も、最初はお腹の中のサナダムシ視点で書こうとしていたんです。でも、小説教室の講師の先生に「それも面白いかもしれないけど、でも、人間を書こうよ」と言われて、それもそうだな、と。確かに、サナダムシ視点だと受賞してなかったかもしれないですね(笑)。

 受賞の知らせを受けた時は、電話をくれた編集者に申し訳なさそうにされずにすんでよかった、というのが率直な気持ちでした。というのも、その前に二回、落選のお知らせを受けた時は、電話をくれる編集者がものすごく申し訳なさそうにしてくれたんです。でも、受賞した時はとても晴れやかに「おめでとうございます」と言ってくださったので、「ああ、よかった」という気持ちでした。

 受賞後すぐの打合せの時に、それまで書いたものをプリントアウトして、どっさり持って行ったんです。その中から担当編集者が選んでくれたものを、最初の短篇集に入れました。あと、チャットガールのアルバイトをしていたことがあると話したら、面白そうなのでその題材で一本書いてみてくださいと言われて、その短篇だけ一から新しく書きました。なので、一冊目の単行本が出るまではそんなに苦労しなかったんです。その代わり、二冊目の『羊くんと踊れば』の執筆には本当に苦労しました。長篇を書くのに慣れていなかったので、もう、ボツの嵐。この時期はちょっとしんどかったですね。

 受賞時に現役SM嬢だということで注目されましたけど、過去には山田詠美さんの例もありますし、今更そんなことに話題性があるとも思ってなかったので、正直驚きました。最終候補に残った時点でスポーツ紙に取り上げられたりもしたので、ネットでは「出来レースだ」なんて言われたことも。自分としてはただ職業としてプロフィールに書いただけだったので、その乖離は少し辛かったですね。でも、注目していただけたお陰で、デビュー直後から執筆依頼をいただけたのはありがたかったです。特に、元女王様ということで、デビューから一、二年は官能ものの依頼が多くて、しばらくは官能小説ばかり書いていた記憶があります。

【次ページ 原稿に行き詰まったら“音読”】

単行本
コイカツ 恋活
坂井希久子

定価:1,415円(税込)発売日:2009年07月29日

文春文庫
こじれたふたり
坂井希久子

定価:586円(税込)発売日:2013年05月10日

プレゼント
  • 『踏切の幽霊』高野和明・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2022/11/25~2022/12/02
    賞品 『踏切の幽霊』高野和明・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る