布団越しに二の腕を突かれる。微かな痛みが意識をまた少し明瞭にする。わたしはゆっくりと布団を剝いだ。薄い布団が酷く重く感じられた。
祐仁がマットレスの角に胡座をかいて、心配そうにわたしを見ていた。
「今日も学校、休むのか」
「きょう、も?」
訊き返すと、彼は悲しそうな顔をして、
「お前な、もう三日休んでるんだよ。ご飯もちゃんと食べてない。父さんも母さんも心配してるぞ」
信じられなかったが、驚きの感情はほんの束の間、心の端の方で瞬いただけだった。
「……別にいいよ」
わたしは答えた。
「こうなってるの、わたし一人だけじゃないもん。勇気も鈴子もそうだし、上のクラスも、下のクラスにだって」
「ああー」祐仁は頭を搔きながら、「それとはまた事情が違うだろ。お前の場合は単にショック受けてるだけじゃないか」
当時のわたしたちは未熟だった。
「“単に”?」
「ああ、ごめん。軽く見てるわけじゃないんだ。けど、くよくよしないでほしいってこと」
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