祐仁は以前より痩せて小さく見えた。わたしのせいで彼まで弱り、衰えている。そんな風に思えた。
微かに胸が痛んだが、これもほんの一瞬のことだった。
「……どうしたらいいの」
わたしは訊いた。
祐仁はしばらく手元を見つめていたが、やがて顔を上げて言った。
「とりあえず、健康に生きることかな。あの子が不幸だからって、自分まで不幸になることなんかない」
「でも」
「慧斗はせっかく良くなったんだ。幸せになったんだよ。それをこんな形で手放さないでほしい」
恩着せがましい言い方だけどさ、と頭を搔く。祐仁の気持ちを思うとまた胸が痛んだ。つい先刻より強く長い痛みだった。
わたしは立ち上がった。それだけで目眩を起こし、転びそうになる。祐仁が慌ててわたしを抱き止める。
「学校には無理して行かなくていい。父さんにも母さんにも説明した」
祐仁は囁き声で言った。
「朋美も、他のみんなも、慧斗が来るのを楽しみにしてる。けど急がなくていい」
「うん」
「どうする? 朝ご飯?」
「うん」
わたしは答えた。祐仁に支えられながら部屋を出た。廊下を歩くのが久々に思えた。
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