父さんも母さんも特に怒ったりはせず、ごく普通にわたしに接した。母さんは茜について根掘り葉掘り訊ね、わたしはその殆どをハイとイイエで答える。飯田邸から戻ってすぐ、二人とも祐仁からあらかた説明を受けていたそうだが、わたしに訊かなければ気が済まないという。
「ずっと生返事で心配だったの。あの日は帰りも遅かったし」
「そう……だったね」
わたしは公園での出来事を思い出した。ウサギのイラストが描かれた便箋、ひらがなで認められた文字。わたしを拒絶する言葉。
胸の痛みを感じながら、わたしは朝食を口に入れ、飲み込んだ。味はしなかったが心は確実に戻りつつあった。
祐仁を見送って、わたしは部屋に戻った。隅に座り、ナップサックの中を漁る。
茜から受け取った便箋が、指に引っ掛かった。姿勢を正し、便箋を開き、もう一度読んでみる。
もうにどとこないで
つぎにきたらわたし
ぜったいにね
ころされます
ほんとうです
さよなら さよなら ともだちはむり
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