一
筆者が現役編集者時代に昭和二年生まれの作家同士、吉村昭・城山三郎両氏の対談を企画したことがある。
昭和二年生まれといえば、いわゆる「末期戦中派」で、一年早く生まれていれば徴兵「兵役組」、一年後だと「学童疎開」戦後派世代となる。歴史の狭間(はざま)に生を享(う)けた、極端な世代ということになる。
昭和二年生まれの、二人の作家に象徴されるのは「軍国少年」時代で、もちろん歴史の反省と自戒の意味をこめているが……。
吉村氏は文壇付き合いをしない、仕事一筋の作家として知られる。城山氏も孤高の作家というべき人物で、茅ヶ崎の海を見下ろすマンションに仕事場を設け、執筆一本槍の人生である。
二人は初対面であったが、同一世代の誼(よしみ)もあってかじつに話が合い、弾み、たちまちお互いを「戦友」と呼びあう付き合いになった。
とくに二人の作家が共感したのは、「戦後へのわだかまり」である。
軍国少年といえば、戦後は「暗黒時代の象徴」であり、「忠君愛国教育の申し子」のように一言で片付けられる。そして、一般世論でも戦争の責任は軍人にあり、「大衆は軍部にひきずられて戦争にかり立てられた」とする風潮が主流だ。
はたして、本当はそうだったのか。
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