書評

沖縄戦で死んだ少年兵は自分だったかもしれない――昭和2年生れの切実な思い

文: 森 史朗 (作家)

『殉国 陸軍二等兵比嘉真一』(吉村 昭)

『殉国 陸軍二等兵比嘉真一』(吉村 昭)

 一

 筆者が現役編集者時代に昭和二年生まれの作家同士、吉村昭・城山三郎両氏の対談を企画したことがある。

 昭和二年生まれといえば、いわゆる「末期戦中派」で、一年早く生まれていれば徴兵「兵役組」、一年後だと「学童疎開」戦後派世代となる。歴史の狭間(はざま)に生を享(う)けた、極端な世代ということになる。

 昭和二年生まれの、二人の作家に象徴されるのは「軍国少年」時代で、もちろん歴史の反省と自戒の意味をこめているが……。

 吉村氏は文壇付き合いをしない、仕事一筋の作家として知られる。城山氏も孤高の作家というべき人物で、茅ヶ崎の海を見下ろすマンションに仕事場を設け、執筆一本槍の人生である。

 二人は初対面であったが、同一世代の誼(よしみ)もあってかじつに話が合い、弾み、たちまちお互いを「戦友」と呼びあう付き合いになった。

 とくに二人の作家が共感したのは、「戦後へのわだかまり」である。

 軍国少年といえば、戦後は「暗黒時代の象徴」であり、「忠君愛国教育の申し子」のように一言で片付けられる。そして、一般世論でも戦争の責任は軍人にあり、「大衆は軍部にひきずられて戦争にかり立てられた」とする風潮が主流だ。

 はたして、本当はそうだったのか。

殉国吉村昭

定価:本体720円+税発売日:2020年07月08日


 こちらもおすすめ
書評作家・吉村昭が妻への手紙につづった文学に向かう覚悟、率直な愛の言葉(2020.04.22)
書評没後十年、吉村昭氏が書き遺した日本近代医療の父の高潔なる生涯(2016.07.24)
書評多くの人間の「犠牲」と自然の計り知れない力。吉村昭が紙碑として伝えたかったこと(2016.02.14)
特集零式戦闘機に青春を賭けた7人の勇者 一機一艦体当たり 大黒繁男(2015.12.16)