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作家・小川哲×禅宗僧侶・松山大耕「ウィズコロナ時代の、心との向き合い方」

作家・小川哲×禅宗僧侶・松山大耕「ウィズコロナ時代の、心との向き合い方」

情報過多社会ならではの悩み

松山大耕さん
京都府京都市・臨済宗妙心寺「退蔵院」副住職。
1978年、京都市生まれ。2003年東京大学大学院農学生命科学研究科修了。07年より退蔵院副住職。各国大使館での講演など、日本文化の発信・交流が評価され、09年より観光庁「VISIT JAPAN大使」、 11年より京都市「京都観光おもてなし大使」。 同年、日本の禅宗を代表し前ローマ教皇に謁見、世界の宗教家などと交流。13年には諸宗教間交流駅伝に参加。 14年度世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席するなど、宗教の垣根を越えて活動中。16年には『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」にも選出された。18年より米・スタンフォード大客員講師。19年文化庁長官表彰(文化庁)、重光賞(ボストン日本協会)受賞。

松山 今は情報過多の時代ですから、不安も大きくなりやすいと思います。私には小さい娘が2人いるのですが、妊娠中、妻がとにかくGoogle先生を頼りにしていて。ネットには出産に関してめちゃくちゃ怖いこと、最悪のケースについて色々と書いてあるから、どんどん不安が膨らんでしまう。情報によって不安があおられてしまうんですね。情報社会の中で、いかにそれらと付き合っていくか。これはすごく大事なことだと思います。

小川 仰る通りだと思います。ですが、そういう考え方をできる人は少ないですよね。

松山 情報を得るだけで満足してしまう、他人の評価をものすごく気にしてしまう、そういう方が増えているなと思います。そしてレコメンド機能にすごく左右されやすくなっている。私もAmazonで買い物をするとき、「これを買った人はこれも買ってます」「この本を買ったら次はこれ」なんていうサジェストについ従ってしまい、気がついたらカゴがいっぱいになっていることが結構あって。私たちは、提案してもらうことに慣れてしまっているんですよね。

 食べログなどの評価機能にも同じことが言えると思います。例えば、退蔵院にはお茶席があって、そこではお抹茶とお菓子を出しています。それが食べログにも載っていて、ラーメン屋やイタリアンレストランと並べて点数が付けられているわけです。「いや、比べられへんやろ!」と(笑)。垂直的にランキングされてるんですよね。私たちは、スコアリングとかアルゴリズムに知らないうちに毒されてるんだと思います。自分で決める力、自分のセンスに自信を持つ力が、社会全体で弱まっていると感じます。

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  • 『星落ちて、なお』澤田瞳子・著

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    賞品 文庫『星落ちて、なお』澤田瞳子・著 5名様

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