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身体に潜んで、絶体絶命のときに我々を導いてくれる『歎異抄』その成立背景と謎に迫る

身体に潜んで、絶体絶命のときに我々を導いてくれる『歎異抄』その成立背景と謎に迫る

釈 徹宗

『歎異抄 救いのことば』(釈 徹宗)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

原典がない!

『歎異抄 救いのことば』(釈 徹宗)

『嘆異抄』に謎が多い理由の一つに、そもそも原典がないことがあげられます。写本しか残っていないのです。

 一番古いものが、室町時代の蓮如(※一四一五~九九年、本願寺第八世、浄土真宗中興の祖。主著に『正信偈大意』『御文(御文章)』)による写本です。その写本は、もともと綴じた本の形態だったのですが、現在は巻子本、つまり巻物の形になって伝わっています。「蓮如本」の『嘆異抄』の一番最後には、法然が四国に流されたり、親鸞が新潟に流されたりした流罪記録(※一二〇七年の「承元の法難」で、法然と弟子たちが受けた処分の記録)がついています。その終盤部分には「流罪以後、愚禿親鸞と書かしめたまふなり。」とあり、これによって親鸞が流罪後「愚禿親鸞」と名乗ったことがわかります。

「蓮如本」は最後に、

「右この聖教は、当流大事の聖教となすなり。無宿善の機においては、左右なく、これを許すべからざるものなり。」

 と、蓮如によって書かれた付言が添えられています。

「誰にでも見せていいものでありませんよ」と、はっきりと蓮如は記しているのです。そして蓮如の署名と花押。これが「蓮如本」の特徴です。

 蓮如が亡くなってからしばらくしてできたのが、「永正十六年本」と呼ばれる写本です。本書のテキストに使う本願寺出版社の『嘆異抄』は、「蓮如本」を原本にしたものですが、岩波文庫は「永正十六年本」を原本にしたものです。照らし合わせると、若干言葉遣いが違います。この二つは別系統じゃないかという意見もあります。「蓮如本」の写本の流れと、「永正十六年本」の流れがあるという説です。また、「永正十六年本」がより原典に近いのではないかとする見解もありましたが、最近の研究の結果、やはりこの「蓮如本」が一番古い形態だろうという結論に至りました。しかし、いずれにしても写本ですから、原典がないかぎり解明できないこともあります。

 また、その他の写本などを見比べると、流罪記録がついているものとついていないものがあります。写本の系統があるのでしょう。

文春新書
歎異抄 救いのことば
釈徹宗

定価:1,122円(税込)発売日:2020年10月20日

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