いくつかの謎を持つ『嘆異抄』
『嘆異抄』について、はっきりとわかっていない事柄についてお話ししましょう。まず、ちょっとややこしいのは第十条です。
現代の第十条の読み方は、冒頭からの、
「念仏には無義をもつて義とす。不可称不可説不可思議のゆゑにと仰せ候ひき。」
この部分だけが第十条であり、その後に続く、
「そもそも、かの御在生のむかし……いはれなき条々の子細のこと。」
の部分を「中序」(後半部の序文)としています。
本願寺出版社の「蓮如本」を底本とした『嘆異抄』も岩波文庫の『嘆異抄』もそのように改行されています。ところが、どの写本を見ても、そのように分かれているとは思えません。
一番古い写本の「蓮如本」(※161ページ参照)は、
「念仏ニハ無義ヲモツテ義トス 不可称不可説不可思議ノユヘニトオホセサウラヒキ ソモソモカノ御在生ノムカシ……」
と、そのまま続けて書いてあります。ここで切れているようには読めないので、これ全部で第十条と考えるべきだとの意見もあります。しかし、内容的には確かにここで一旦切れます。この辺り、原典がないため明瞭な結論が出せないのです。
また、師訓編と異義編が、もともとこの順番だったのかも怪しいという説もあります。先ほど言いましたように、第一条、第二条……と番号が付いているわけではありませんので。
あるいは、各条の文章の中には、主語と述語が合わないこともあり、これもどう考えればよいのかの論点となっています。
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