『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』の文庫化にあたり、光栄なことに、解説の執筆を高野秀行さんから指名いただいた。
高野さんには2018年2月に下北沢の本屋B&Bにて開催した拙著『ジャジューカの夜、スーフィーの朝』(DU BOOKS)の出版記念イベント「俺たちが食べた中東うまいもの自慢(たまに音楽)」で初めてお会いした。
僕は1967年2月生まれなので、66年10月生まれの高野さんとは同級生にあたる。長らくワールドミュージックのDJ/音楽評論家として活動しているが、近年は興味と趣味がこうじて中東料理の本を出し、料理教室の講師を行い、中東料理研究家とも名乗っている。
多くの日本人が行きたがらないような世界の国や地域に出かけ、ネタを集め、日本に戻り、文章を書き、本にまとめて発表するということでは高野さんと僕の仕事は重なるが(要はグルメ作家?)、幸いにも肝心のネタが重なることはほとんどない。
それでも出版記念イベントでの会話が縁となり、翌月には本作の元となった『週刊文春』の連載コラム「ヘンキョウ探検家 高野秀行のヘンな食べもの」のためにトルコの水餃子マントゥを作るのを彼から依頼された。そして、同年の10月には早くも本作の単行本が出版され、僕はそこにも登場することになった。「美形民族がこだわるトルコ極小餃子」、「耳かき作業で作るシルクロード食」を参照いただきたい。これまで出会った音楽アーティストや料理シェフたちなど他人をネタにして本を書いてきたが、他人の本に自分が登場するのはちょっと不思議な気がしたものだ。
それから2年、高野さんに再会する機会こそなかったものの、出かけたレストラン(「高野さん、昨日来てたのよ~!」)や共通の友人(「高野さんにこないだ会いましたよ~!」)を通じて高野さんを身近に感じる機会は近頃ますます増えてきた。
さて、そんなご縁がある『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』の単行本を、残暑厳しい9月上旬に久々に手にとった。そして、リビングのソファに寝転びながらページを開くと、3時間ほどで一気に読み終えてしまった。
やっぱりおもしろい!
酒の席のオヤジの与太話のような小文から(「激マズ! 怪しいインド人の納豆カレー」や「熊本で食べた生のカタツムリ」など)、食文化の知的冒険が味わえる連作(ペルーの「口噛み酒」やネパールの「水牛居酒屋」シリーズ)、さらに昆虫食や彼のライフワークと言える世界の納豆レポート、そして臓物や未消化物までぶちまけるハードコアな問題作(「トン族は『ヤギの糞のスープ』を食べる⁉」や「サルの脳味噌、争奪戦」など)まで、彼の脳内逍遥ネタの宝庫なのだ。さんざん広げた風呂敷を幻覚剤ヤヘイ(アヤウアスカ)を求めてコロンビアまで足を運んだ学生時代の遠い思い出で閉じる構成も素晴らしい。
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