- 2020.11.27
- インタビュー・対談
スポーツにして最も知的なギャンブル「競輪」。その奥深い魅力
轡田 隆史 ,堤 哲 ,藤原 勇彦 ,小堀 隆司
『競輪という世界』(轡田 隆史/堤 哲/藤原 勇彦/小堀 隆司)
競輪というゲーム
レースがある日、競輪場のゲートが開くと、ファンはみなバンクのある屋外を目指す。そこは競輪を楽しむための特等席で、フェンス越しに、すぐ目の前をシルバーに光る自転車が疾走していくのをよく見ることができる。選手がペダルを踏むたびに乾いた音が耳に迫り、異空間に足を踏み入れた興奮がじわじわと押し寄せてくることだろう。
「バンク」という言葉になじみの薄い読者もいるかもしれない。
バンクとはすり鉢の形状をした競走路のことだ。競輪場によって1周の長さは違い、短いところで333.3メートル、長いところでは500メートルもある。走路は直線と曲線でできていて、見た目にも美しい。自転車が高速で走っても遠心力で飛ばされないようにカーブ部分には深い傾斜がついている。その斜度は25度から36度! レースは基本的に9人の選手で争われる。人が立っていれば滑り落ちそうな斜面の上を、9台の自転車が風のようなスピードで通り過ぎていくのだ。
競輪ファンはなぜ、競輪というゲームに惹きつけられるのか。
その最たる理由は人間くささにあるのかもしれない。競輪は競馬、ボートレース(競艇)、オートレースと並ぶ公営ギャンブルの1つだが、人の力だけを動力にしている点で唯一無二といえる。主役は速く走るためにブレーキまでをも削ぎ落とした自転車(自転車レースの専用車を「レーサー」という)であり、それを操る選手の分厚い太腿と、レース展開を読み解き、ライバルとの駆け引きを制そうとする頭脳戦にファンは魅了されるのだ。
競輪場に行けば、きっと多くの歓声を耳にするに違いない。
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