- 2020.11.27
- インタビュー・対談
スポーツにして最も知的なギャンブル「競輪」。その奥深い魅力
轡田 隆史 ,堤 哲 ,藤原 勇彦 ,小堀 隆司
『競輪という世界』(轡田 隆史/堤 哲/藤原 勇彦/小堀 隆司)
ライン――チーム戦略から個の戦いへ
誰が先行し、誰がどこで仕掛けるのか、選手は互いの腹を探りながら、それぞれが得意の戦法に持ち込もうとする。
長い距離でコンスタントに力を発揮できる選手は、持久力にものを言わせ序盤から勝負をかけてくるだろう。対して、スプリント力に長けた選手は後半勝負にかけてくるはずだ。後半勝負と言っても一様ではなく、レース終盤に後方から勢いをつけて一気に追い抜いていく戦法を「捲り」といい、最後の直線で鋭く前に出る戦法を「差し」と呼ぶ。選手の脚質を見極めることが、レース展開を深く読み解く上では欠かせないのだ。
また、競輪には同じ県や同じ地方の選手が「ライン」と呼ばれる隊列を組んで連携し合う、独特の競走スタイルが存在する。これが初心者に対して予想をぐっと難しくしている。
競輪選手にとっての最大の障壁は風圧と言われるが、先頭を走る選手には大きな風の抵抗が生じ、次第に脚力を奪われていく。そこでレースの序盤は先頭員(ペースメーカーや風よけの役割を果たす先頭誘導選手のこと)がつき、スタートしてしばらくは緩やかに車列が縦に並ぶ現在のスタイルが築き上げられた。
縦に並ぶ車列の中にも、競輪ではいくつかの塊が存在する。風を切ってでも前に行きたい選手の後ろに、最後の加速に賭けようとする選手が続き、3人から4人のラインが形成される。塊の先頭に立ってラインを引っ張るのは主に若手で、彼らは身を盾にしてラインを好位置に導こうとする。ある意味では、競輪はチームスポーツでもあるのだ。「ライン」とはすなわちチームとしての戦略なのである。
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