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作家の羽休み――「第23回:群馬の蝋梅」

作家の羽休み――「第23回:群馬の蝋梅」

阿部 智里


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 9回目のコラムでもお話ししていますが、私は群馬の田舎出身です。そう言うと「じゃあ虫とかも平気なんじゃない?」と無邪気に言われることもあるのですが、トラウマになる事件が多い分、むしろ虫は苦手な傾向にあります。ゲジゲジやありんこ、やぶ蚊等との壮絶な戦いがあるわけですからね。夏場は長袖長ズボン虫よけスプレー噴霧済みじゃないと到底外を出歩くことは出来ませんし、雨戸を閉めようと思ったらぶりぶりのカマドウマが飛び出してきますし、シャンプーをしている最中に「なんか足がくすぐったい……?」と思って目を開くと、膝の上に馬鹿でかいゲジゲジが「コンチハ!」していたことも一度や二度ではありません。

 しかも群馬、夏は暑くて冬は寒いという四季に非常に忠実な土地です。盆地なので夏は熱気がこもり、打ち水をすると天然のサウナみたいになってしまいます。冬は名物の赤城おろしが怒涛の勢いで押し寄せて来まして、舞い上がった畑の土で視界がゼロになったり強風のため体育の授業が中止になったり向かい風の中で自転車を漕ごうとしたら全力でペダルを踏んでいるはずなのにピタリと静止したまま動けなくなったりしました。

 大学生の頃は帰省する度に、こう思ったものです。

「なんで私、わざわざ夏休みに暑い土地に行って、冬休みに寒い土地に行くんだろう……?」

 すると、私の中のもう一人の私がハリウッド映画に出てくるナイスガイのような笑顔で親指を立てて言うのです。

「分かっているくせに! それはね、私の愛する故郷が群馬だからさ!」

「そっかー」

 不毛な自問自答です。

【次ページで、群馬で今見頃の花をご紹介】

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