そしてこの時期になると、さくらんぼと同じくらい楽しみにしている矢車草の花が咲きます。
矢車草はその名の通り、こいのぼりのてっぺんについている矢車みたいな形をしており、青やピンク、赤紫や薄紫、白と、彩り豊かなたくさんの花を咲かせます。花びらの水分量が少ないので、簡単にドライフラワーに出来るのもすばらしい! 小さい頃は、秘密基地によく飾っていたものでした。(現在の正式名称は矢車菊らしいですが、我が家ではずっと矢車草と呼んでいましたのでコラムの中でもそう呼ばせて頂きます)
五月になると我が家の畑には色とりどりの矢車草が咲くので、母の日に私がちっちゃなブーケを作りプレゼントするようにしています。小学生の頃から続く、我が家の恒例行事ですね。そういえば小学生の頃、担任の先生にも作って差し上げたところ、大変喜んでくれて、ドライフラワーにして大切に取っておいてくれたこともありました。
祖母が花好きだったので、昔から実家にはたくさん花が咲いていましたが、最近では、農作物をそっちのけで、リタイアした父が畑でいそいそと花を育てるようになりました。それぞれの花に思い出と思い入れがありますが、私にとって、矢車草は特に楽しい思い出の詰まった花なのです。
阿部智里(あべ・ちさと) 1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く著書「八咫烏シリーズ」は累計130万部を越える大ベストセラーに。松崎夏未氏が『烏に単は似合わない』をWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)ほかで漫画連載。19年『発現』(NHK出版)刊行。現在は「八咫烏シリーズ」第2部『楽園の烏』を執筆中。
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