- 2021.09.06
- インタビュー・対談
ステイホームのお供に! 2021年上半期の傑作ミステリーはこれだ!【国内編】<編集者座談会>
「オール讀物」編集部
文春きってのミステリー通編集者が2021年の傑作をおすすめします。
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#エンタメ・ミステリ
【“新本格”の歴史を総決算する館ミステリー】
A そう考えると、『硝子の塔の殺人』(実業之日本社)を書いた知念実希人さんの立ち位置も、今村さんと似ているかもしれません。
知念さんは、もともと筋金入りの本格ミステリーマニアではないけれど、島田荘司さんに見いだされたということもあり、いつか自分なりの「本格」を書かねばという気持ちがあったのだと思います。今回の作品は、一念発起して、新本格ミステリーの歴史を勉強し直し、知念さんなりの総決算として書いたところがあると思います。だからこそ、ミステリーのパビリオンみたいな作品になった。
K 富豪が建設した「硝子の塔」という奇妙な館の、ありえないような間取り図が巻頭に掲げられ、ミステリーマニアの名探偵、作家、編集者、霊能力者、医師、執事にメイドに料理人と、怪しい人ばかり出てきて、事件はすべて密室で起きる……。「これぞ新本格!」と言わんばかりの作りになっています。
司会 舞台も事件も、新本格ミステリーの歴史を順々に辿っていくような構成ですよね。
H 冒頭、犯人の独白から始まるので、倒叙形式ミステリーなのかなと思ったら、早い段階で犯人の身に覚えのない新たな死体が出現するツカミも上手です。
たぶん、ミステリーをたくさん読んできた人ほど作者の術中に嵌まるんですよ。「いかにも」といったシチュエーションで密室殺人が続いて、「これはあのトリックでは?」「え、ホントに? まさか?」って、途中、すごくハラハラするじゃないですか(笑)。でも、「これはもしかして?」みたいな読者の既視感さえ、結末を示唆する一つの伏線になっているのがすばらしい。
司会 とにかくミステリー愛が炸裂していて、読んでいて楽しい。名言もたくさんあって、個人的にいちばん好きなのは、これです。
「『モルグ街の殺人』より前に書かれていたミステリがあったとすれば、トロイアの発見が考古学会に与えたインパクト以上の衝撃がミステリ界に走るだろう」
A フフフフフ(笑)。
H あまり言うとネタバレになってしまいますけど、「名探偵なるものがいかにして誕生するか」というメカニズムがしっかり検証されていて、そこに大きなトリックも仕掛けられているじゃないですか。ミステリーファンなら誰が読んでも絶対に面白い作品です!
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