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編集長が語る【オールの讀みどころ】 2024年2月号は大人の恋愛小説大賞&万城目学エッセイ&大人の警察小説特集!

編集長が語る【オールの讀みどころ】 2024年2月号は大人の恋愛小説大賞&万城目学エッセイ&大人の警察小説特集!

文:「オール讀物」編集部


ジャンル : #小説 ,#エンタメ・ミステリ ,#歴史・時代小説

「本の話」を読んでくださっているみなさん、いつもご愛読ありがとうございます。編集長の石井です。

 5人の精鋭(?)でつくっている「オール讀物」の部員紹介や、日ごろ社内で起きている出来事については、note不定期連載の編集部だより「オールの小部屋から」で発信しておりますので、この機にチェックしてみてください!

 こちら「本の話」の月イチ連載「オールの讀みどころ」では、最新号について、編集部員がどんなところに力を入れたか、渾身の企画を紹介していきたいと思っています。

 というわけで、「オール讀物」2月号です。

「オール讀物」2月号

 3回目を迎える「大人の恋愛小説大賞」は、田中兆子さん『今日の花を摘む』(双葉社)が受賞作と決まりました。選考にあたったのは5名の書店員のみなさん。加藤ルカさん(有隣堂)、川俣めぐみさん(紀伊國屋書店横浜店)、高頭佐和子さん(丸善丸の内本店)、花田菜々子さん(蟹ブックス)、山本亮さん(大盛堂書店)。第一線で活躍するすごいメンバーが文藝春秋に集まりました。

 選考中、ある委員が田中さんの作品を評して「ついに来た、大人の恋愛小説」と呟いたのが印象的でした。受賞作の主人公は51歳、出版社の製作部に勤務する愉里子さん。彼女は肉体関係をともなうかりそめの恋愛を“花摘み”と呼んで趣味にしています。更年期、老い、性的不能……と、恋愛や性愛のリアルが心身の変化とともに綴られていく『今日の花を摘む』。「作品をどう評価するか」のみならず、書店員さんらしく「どんなお客さんにお薦めできるか」まで議論された選考会の模様をぜひお読みください!

第3回大人の恋愛小説大賞に輝いた田中兆子さん

 ニュースでご覧になる機会も多いと思います。日本大学理事長として日々奮闘されている林真理子さんが、皇室の結婚をテーマにした短編「兄弟の花嫁たち」を寄せてくれました。林さんの容赦のない筆は、やんごとなき人々の結婚に対するホンネを鋭く浮き彫りにしていきます。内親王は「ご体裁があまりよくない」「ご免こうむりたい」……こうしたセリフひとつひとつに、「これは林さんでないと絶対に書けない!」と、私たち編集部員はしびれるしかありませんでした。人生の酸いも甘いもかみわけた、まさに大人の筆。

 村山由佳さん、千早茜さんによる「『恋愛小説』書き方講座」も、冒頭から圧巻でした。「普段のように『千早』と呼びます」と口火をきった村山さんに対し、千早さんも「私も『由佳さま』と呼ばせていただきます」と応答。ゆ、由佳さま……!? 互いへの尊敬と親愛の情に裏打ちされた濃密な対話に、思わず引き込まれていきます。「実体験をそのまま書けば小説になる?」「他人に恋愛感情を抱いたことがなくても小説は書ける?」等々、参加者から寄せられる率直な質問に、村山さんも千早さんも言葉を選びながら真摯に答えていきます。私が進行係を務めたのですが、うかつな発言をしてキッと睨まれる一幕もあり、ふたりの女帝を前にした緊張で、翌日、グッタリ寝込んでしまいました(笑)。その時の模様は、noteの「オールの小部屋から」にも記しています。

 久世番子さんの漫画「恋愛小説ってなんなのさ」は古今の名作を紹介する楽しい読書ガイド。ちなみに久世さんの漫画には、恋愛小説への思いを熱弁するキャラとして担当編集者Hさんが登場しています。ふだんは裏方の編集者ですが、ときたま作品に登場すると実はけっこう嬉しくもあります。みなさん、ぜひ書店で手に取って、編集Hさんの活躍を応援してください(62頁からです)。

 祝・直木賞! 『八月の御所グラウンド』で直木賞を受賞されたばかりの万城目学さんに、新春随想を書いていただきました。題して「万城目学、クイズ番組に挑戦する」。舞台は2023年、灼熱の夏。“無慈悲な夏将軍”に打ちのめされ、2か月のあいだ1枚の原稿も書けないでいた万城目さんは、あるクイズ番組に出演することになったのだとか……。『八月の御所グラウンド』のぐうたら大学生を彷彿させるような作者の姿は、読む者の胸に深い余韻と笑いをもたらします。直木賞受賞作とあわせて、このエッセイをお楽しみいただけたらと思います。

『八月の御所グラウンド』で第170回直木賞を受賞した万城目学さん

 さて、大人の恋愛小説に加えて、2月号では大人の警察小説を大特集。中山七里さん新連載「ハングマン 鵜匠殺し」は、司法の手が届かない“真の悪”をあぶり出す現代の必殺仕事人たちの活躍を描いていきます。今回の敵は特殊詐欺グループ。詐欺のターゲットになったおばあちゃんの様子があまりに可哀想で、編集部いちばんの若手Sさんは「絶対に許せない!」と声を震わせて怒っていました。果たして“悪”は罰せられるのか。新連載からお読みいただいて、物語の行方を見守っていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。

 ほか、芦沢央さんの退職刑事もの、長崎県警浦上署を舞台にした荒木あかねさんの新シリーズ、誉田哲也さんの警視庁公安部、今野敏さんの倉島警部補新作など、読み応えある警察小説のオンパレード。アンソロジー2冊分くらいの警察ミステリーをお楽しみいただけたら幸いです。

デビュー45年を迎えた今野敏さん

 さまざまな作家たちの講座も掲載しています。特殊詐欺に絡めて言えば、大阪府警とヤクザを描かせたら当代一の黒川博行さんが、元警視庁科学捜査官の服藤恵三さんに犯罪捜査の最前線を聞く対談は読み逃せません。最先端のITが特殊詐欺の現場で用いられている現実には唖然としますし、AIを駆使する捜査の未来像にはただただ驚愕。今野敏さんは昨年がデビュー45周年。45年書き続ける秘訣の数々をインタビューで明かしてくれているのですが、私は「流行作家になる」と目標を定めて実現する今野さんの執念に胸を打たれました。『きこえる』『いけない』といった体験型ミステリーを次々に上梓されている道尾秀介さんには「画像や音声から真相に至る」新しい形の謎解きの魅力をレクチャーしてもらいました。

黒川博行さん(右)と服藤恵三さん

 恋愛小説から警察小説まで、大人の読者に味わっていただきたい小説&企画が盛りだくさんの2月号をどうぞよろしくお願いします!

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雑誌・ムック・臨時増刊
オール讀物2024年2月号
オール讀物編集部

定価:1,100円(税込)発売日:2024年01月22日

単行本
八月の御所グラウンド
万城目学

定価:1,760円(税込)発売日:2023年08月03日

電子書籍
八月の御所グラウンド
万城目学

発売日:2023年08月03日

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

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