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[文庫化記念対談]皆川 明×平松洋子 トレンドを超越するテキスタイル・デザインの力

[文庫化記念対談]皆川 明×平松洋子 トレンドを超越するテキスタイル・デザインの力

『ミナを着て旅に出よう』 (皆川明 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #ノンフィクション ,#趣味・実用

皆川 具体的に説明すると、たとえば今シーズンは「海と砂漠」というコンセプトです。真逆のものですが、なぜか西麻布の交差点をクルマで通っている時に突然その2つの言葉がポンと浮かんできたんですね。言葉の矛盾は出発点として面白く、その言葉を解釈して考え始めます。砂漠のサボテンと海の珊瑚、波と砂は似ているな……、そんな風にデザイン的な構成をイメージして、図柄に落とし込んでいきます。

平松 外に向かうというより、自分の中を見つめていく作業ですね。そこには完全には作り込まない遊びもあって。

皆川 新作の四角い升の図柄(jelly)では、「数独」というゲームを応用しています。それを自分で作って、海っぽい色を9色選んで、自分では色の配置は考えずに升目にバラバラに色が刷られていく方法を考えました。自然が様々な条件でランダムに描き出す模様を表現してみようと思い、自分が決める部分と最後は偶然が決める部分を作りました。説明しきれるものはあまり魅力的じゃないので(笑)。

平松 ファッショントレンドは、説明が明確に行われているようですが、それとは真逆なんですね。ミナのファンの方々から、「デザインに安心するし、着ていて落ち着く」「なぜここまで私の好きなものをわかるのだろう」とよく聞くのですが、お話を伺っていて、言葉を介した精神性のようなものを深く共有しているのかもしれないと思いました。

皆川 自分の絵は自然のものが多いですが、実物をデッサンしたり描写したりすることはありません。こんなふうに風が吹いてる時に咲いている花……といった自分の記憶の中のことを描いているので、着る方の記憶と繋がりやすいのかもしれません。ミナの服は女性的とよく言われますが、特に意識はしていません。図案で多い花も自分のイメージを描いているだけで、デザイン自体は女性でも男性でもどちらでもなく、生地が使われるフォルムだったり、最終形の洋服がそう見せているのだと思います。

平松 はじめて女の人の洋服っていいなと意識したのが3、4歳のころ、母が夏に着ていた簡易服のような昭和のワンピースです。ストンとして風通しが良く、身体につかず離れず、しかも女性の曲線も感じさせ、空気感をまとっていて――。生地の柄まで鮮明に覚えています。

皆川 自分もそういう服は好きです。仕草によってフォルムが変わって服も動きます。空気をはらませるのはアジア的な発想なのかもしれませんね。実は服って、無頓着な状態が一番自然に着こなされていて、服に意識がゆき過ぎないゆるやかさがあったほうが、その人が素敵に見えると思います。

平松 最後に、作り手の側から上手な服選びのアドバイスを頂けますか。

皆川 服選びで、2つのうち最後にどちらか迷った時は、今まで選んで来なかったタイプを選んではどうでしょうか。それは多少の勇気がいることかもしれませんが、迷うくらいですから新しい自分が発見できる、新鮮な服になると思います。

「ミナ ペルホネン」の白金台本店にて
文春文庫
ミナを着て旅に出よう
皆川明

定価:836円(税込)発売日:2014年03月07日

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