書評

夢を運ぶ男

文: 夢枕 獏

『空海曼陀羅』 (夢枕獏 編著)

本書は2004年に日本出版社より刊行された単行本『空海曼荼羅』を文庫化したものです。単行本として出版された折に寄せられた著者の解説文を再録して公開します。 ※内藤正敏氏の「ミイラ信仰の研究」(抜粋)は、ご本人に連絡がとれず、当文庫には再録しておりません。

「弘法大師空海」(第一巻・五、六話)ジョージ秋山(一九九七年・集英社)

 漫画である。

 そして、ジョージ秋山である。

 もんくありますか。

 本書の話がもちあがった時、

「ぜひジョージ秋山の空海を入れましょう」

 こう言ったのはぼくである。

「え、ジョージ秋山さんが、空海を描いているのですか」

 いるのです。

 それが、今回収録した作品である。

『マンガオールマン』に連載されていたもので、ジョージ秋山は、これ以外にも二宮尊徳のことを、おもしろい宗教色の強い漫画にしている。

 この“空海”の話は、二宮尊徳の話とも通ずるものだ。

 大人の時代の空海のことは、色々な人が描いて(書いて)いるが、少年期についてはほとんどない(と思う)。

 まったく、ジョージ秋山は、いつ何を書くかわからないところが凄いのである。

 

「ミイラ信仰の研究」(抜粋)内藤正敏(一九七四年・大和書房)

 空海が、“水銀をやっていた”というのは、ぼくも、ほぼ間違いないであろうと思っている。

 内藤さんが書いているように、『三教指帰(さんごうしいき)』の中で、

「中国の神仙術の知識を、おどろくべき正確さで述べている」

 し、唐に行ったおりにも、様々なかたちで道教には触れたに違いない。

 空海の死の原因の中には、おそらく水銀中毒というのもあり得るのではないかと思う。

 空海が好きなぼくとしては、そう考えたくはないのだが、状況証拠は多い。

 このようなことが書かれているのも、バランスとして、本書の中に間違いなくあって然るべきであろう。

 

「ブッダの方舟」(はじめに)夢枕獏(一九八九年・河出書房新社)

 中沢新一氏との対談本の最初にぼくが書いたものだ。

 この本、途中から四国の真言僧宮崎信也氏も加わって、なかなかおもしろい体験を、ぼくはさせていただいた。

 わざわざ解説は入れないが、読んでいただければ幸いである。

 

平成十六年二月吉日 小田原にて 

空海曼陀羅
夢枕獏・編著

定価:本体740円+税 発売日:2016年10月07日

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