世界で活躍するアスリートの親の子育てをテキストに教育評論家の尾木ママと、育児中の元トップ選手が語りあう教育論。反抗期の乗り越え方、子供を自立させるための方法とは。
――かつて、イチローや松坂大輔、そして今日来てくださった杉山愛さんら十人のアスリートの親に取材し、『天才は親が作る』という本を出したのですが、それから約十年の歳月が流れ、近年の子育てはどうなっているのかな、という疑問が出てきました。その答えを知るべく、大谷翔平、藤浪晋太郎、宇佐美貴史、石川佳純らの親に話を聞いた『天才を作る親たちのルール――トップアスリート誕生秘話』が二月に刊行されます。
この本を読んでいただいた尾木直樹先生と杉山愛さんに、現代の子育て、孫育て事情を語りあっていただきたいと思っています。
選手たちの親に共通していたのは「子育てが楽しかった」ということ。愛さんは、親に見つめられて育ったという実感はありますか。
杉山 ありますね。心地いい愛情なんです。後から聞いて驚いたのですが、母は私のことを「所有物ではなくて、社会からの預かりもの」だという風に考えていたらしいんです。だから、練習の送り迎えもしてもらって、フルサポートなんですけど、いい距離感がありました。「どうなの? どうなの?」としつこく聞かれたら、「もういいからっ」となると思うんですけど、そうしないから「ねえ、聞いてよ、聞いてよ」って私から言いたくなっちゃう。
尾木 ああ、それいいわね。なかなかそれができないのよね。だから愛さんのことを「愛ちゃん」と言わないで、「彼女」と呼ぶんですね。所有物として考えていない。それが表現にまで出ているっていうことね。本当に感心します。
杉山 昨年夏に、男の子を出産したこともあって、母の偉大さを実感する日々です。ここ最近は、「アスリートになるには何が必要ですか?」と聞かれる事が多いですね。先日母と話していて答えがようやくみつかったんです。負けず嫌いはもちろんどのアスリートにもある素質ですが、「誰々に負けたくない」ではなくて「自分に負けたくない」という気持ちが、トップアスリートにはあると思います。
尾木 この頃、そういった新しい生き方のアスリートが多く出てきましたよね。僕の大好きなフィギュアスケート選手のゆづ(羽生結弦)が典型的です。二〇一五年十一月のGPシリーズカナダ大会では、失敗してカナダのパトリック・チャンを抜けなかったけれど、冷静に自己分析をし、対“相手”ではなく対“自分”なんだと言っていました。体操の内村航平君や競泳の萩野公介君など今の若い世代のアスリートは、他人とではなく、自分と戦うのが大きな特徴です。
杉山 一部のメディアには残っていますが、金メダル至上主義には、見ていて違和感がありますね。
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