前編より続く
世界で活躍するアスリートの親の子育てをテキストに教育評論家の尾木ママと、育児中の元トップ選手が語りあう教育論。反抗期の乗り越え方、子供を自立させるための方法とは。
自己決定させることの重要性
尾木 この本に出てくるほとんどの子は反抗期がなかったと書かれていますが、萩野公介君は典型的な反抗期もありましたよね。壁に凹みがあるんでしょう?
――その都度小さな反抗期みたいなものはあったみたいです。
尾木 それでいいのよ。僕は四十年以上教育に携わっていますが、大なり小なりみんな反抗期というのがあります。反抗期がない子どもが三割を超えてきたとかいって大騒ぎになっていますが、それは、現象面に過ぎない。中学入ってきて入学式の日から卒業式まで荒れてる子がいる。おつりがくるほど荒れる子もいますが、一方で、本当に一週間ぐらいで突き破る子もいます。二年生のある時期、「あらっ、この子目つきも変わってきたし反抗期だな」と思うと、次の月にはストーンと穏やかになっているんですね。
杉山 卒業しちゃうんですか。
尾木 そうなの。僕、ある時その子に「あなたどうして反抗期こんなに短かったの?」って聞いたんです。そうしたら、母親が自分とぶつかり合って涙を流しているのを見て、どれほど苦しんでいるのかというイメージを膨らませたというんです。イメージの中で母親との対立関係を消化して、そしたら「なんかスッとしました」っていうのね。
――愛さんは自分で反抗期はあったと思います?
杉山 反抗期といいますか……。自分は遅く来たのですが、母は常々、「あなたはどうしたいの?」と言って、その都度、尊重してくれました。ところが突然二十代半ばで「あれっ、私は、親が敷いてくれたレールに乗っているだけなんじゃないか」と、考え出した時期があったんです。「もう全部自分で決めるから」みたいな感じでかたくなに、壁を作りました。ただ、それこそあっという間に、「あっ、そうじゃなかったんだ。私は、自分のやりたいことを自分で決めてたよな」と気付いて、卒業できました。思えば、当時はスランプに陥ってた時で、他にも課題があったので、自分と向き合うことの大切さにも気付かされました。人間としてもひとつ成長するために与えられた時期だったんですね。振り返ると、アスリートとしてのターニングポイントだったなと思います。
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