彩夏は再び含み笑いを漏らすと、岳士の下半身に伸ばしている手に軽く力を入れて、ジーンズ越しにそれを掴む。痛みと快感が同時に走り、岳士は逃げるように体を引いた。その隙に、上半身を起こした彩夏は空いた手で岳士の胸を押す。抵抗することもできず、岳士は逆にベッドに押し倒された。
「大丈夫よ、逃げたりしないから。というか、もう逃がしてあげない」
おどけるように言うと、彩夏は片手で岳士のTシャツを首元までまくり上げ、露わになった乳首を舐めた。熱く濡れた感覚に、岳士は歯を食いしばる。
「さっきのお返し」
舌を這わせたまま、くぐもった声でつぶやいた彩夏は、再びジーンズ越しに熱く硬直した部分をこすりはじめる。岳士はただされるがままに、未知の快感に翻弄され続けることしかできなかった。
厚い生地を通して伝わってくる感触がなんとももどかしく、岳士は尻をもぞもぞと動かす。妖しく口角を上げた彩夏は、岳士の胸からへそに向かってゆっくりと舌を移動させていくと、ベルトに手をかけた。
カチャカチャという金属音が部屋の空気を揺らす。首だけ起こした岳士は、ベルトを外した彩夏がジーンズのファスナーをつまんで下ろしていくのを、息をすることも忘れて眺めていた。
彩夏は添い寝をするように岳士の隣に横たわると、指で岳士の下腹部を歩くようにゆっくりと下ろしていった。やがて、その手はボクサーブリーフの中へと侵入していき、燃え上がりそうなほどに熱く怒張した塊に触れた。生地越しに触れられたときとは比べ物にならない、温かく柔らかい感触に包み込まれる。
「気持ちいい?」
彩夏は手を上下に動かす。目を閉じ、奥歯を軋ませながら、岳士は体を弓なりに反らすことしかできなかった。彩夏が手の動きを加速させていく。
目の奥で火花が散った気がした。全身の筋肉が収縮し、心臓の拍動に合わせて、熱い塊が彩夏の手の中で何度も跳ねる。
気を抜けば失神してしまいそうな快楽に翻弄されながら、岳士は息を止める。やがて、官能の波が引いていき、脱力感が襲い掛かってきた。岳士はベッドに四肢を投げ出すと、必死に酸素をむさぼる。息が整ってきて重い瞼を上げると、彩夏が顔を覗き込んでいた。
「すごかったね。そんなに気持ちよかったの?」
興奮がおさまるにつれ、羞恥心が胸を満たしていく。彩夏の顔をまともに見ることができなかった。
「そんなに落ち込まないでよ。可愛かったわよ」
彩夏は岳士の頬に唇を当てる。しかし、惨めな気持ちは消えるどころか大きくなっていく。
「大丈夫だよ。まだはじまったばかりなんだからさ」
彩夏はそう囁くと、ベッドの上を移動し、脱力している岳士の両足の間へと入り込んだ。
「サファイヤが効いているから、すぐに回復するよ」
「え? 何を……?」
彩夏は答えることなくボクサーブリーフに手をかけ、無造作にずり下げた。
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