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舞台は、戦闘機開発の最前線! 高度なものづくりを描く<お仕事小説>

舞台は、戦闘機開発の最前線! 高度なものづくりを描く<お仕事小説>

文:吉野 仁 (書評家)

『リヴィジョンA』(未須本有生 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『リヴィジョンA』(未須本有生 著)

 また、自衛隊に納める戦闘機である以上、何千何万と大量生産するものではない。そうした製造過程が本作ではじつにリアルに描かれていた。とくにキャノピー(操縦席をおおう風防部分)の製造において専門の下請け会社へ発注し作りあげていく過程やゴム製の部品管理をめぐるトラブルなど興味深いところだ。航空機メーカーにかぎらず、ものづくりの現場を知る読者であれば、共感するエピソードが多いのではないだろうか。本作では、そこに会社内外の思惑が絡むことで、よりドラマ性を高めている。さらに今回は、沢本由佳のみならず、職場の女性たちの活躍が前回にもまして強調されていた。これも時代の流れを映しだしているといえよう。

 未須本有生は、単行本刊行時の著者インタビューで「この本はかつての同業者、技術者にこそ読んでほしいんです。なぜなら彼らとは、問題意識を共有しているはずだから」と述べていた。政治家や役人、そして企業の上に立つ人たちは、『ものづくり大国ニッポン』といいながら、ネジ一本の仕様が大きな問題となる現実をなにも知らないし、実際のものづくりの世界を知ろうともしない。「日本のものづくりの空洞化はどんどん進んでいます」と危機感を口にする。現場で実際にものをつくってきた作者ならではの目線で臨場感たっぷりに書かれている本作には、そうした思いがつまっているのだ。

 作者は、二〇一六年十月に長編第三作『ドローン・スクランブル』を上梓している。これは題名にあるとおり、新規のドローン開発をめぐる物語だ。ここでも沢本や倉崎をはじめとするお馴染みの人物が登場するなか、三友重工の技術者である内山田幸介のキャラクターが目立っており、ぜひ注目してほしい。そして二〇一七年三月、文庫書き下ろしによる『ファースト・エンジン』を発表した。こちらは、国産初のアフターバーナーエンジンの開発にとりくむ技術者たちの闘いをめぐる小説である。これぞ〈ものづくりの現場〉を生々しく描いているのだ。はたして未須本有生が次にどのようなテーマに挑むのか、その後の沢本や倉崎の活躍は描かれるのか、とても愉しみである。

リヴィジョンA
未須本有生

定価:924円(税込)発売日:2018年06月08日

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