- 2018.07.20
- 書評
書き手の愉しみ、読み手の愉しみ――馳星周が挑んだ新境地とは?
文:村上 貴史 (書評家)
『アンタッチャブル』(馳 星周 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
■ステップ&スピン
なんて愉しい本だ!
この文庫本を両手で持って立ち上がり、ステップでも踏みながらページをめくりたくなる。
なんならスピンを加えてもいい。
そんな具合に愉しい本なのだ。
■椿&宮澤
宮澤武は、しでかしてしまった。
捜査一課の刑事として手柄を焦るあまり、浅田浩介を病院送りにしてしまったのである。実のところ浅田浩介は、特に何らかの事件との関わりを持っていたわけではなかった。単なる一般人である。にもかかわらず、宮澤武のせいで――大切なことだから繰り返すが、宮澤武のせいで――植物状態に陥り、未だに意識を回復していない。警視庁に採用されて十五年、刑事一筋で来た宮澤の人生は、このしでかしによって大きな転換点を迎えることになった。捜査一課を放り出されることになったのである。
行き先は警視庁公安部外事三課特別事項捜査係。宮澤は、そう、刑事警察から公安警察へと異例の異動を命じられたのである。上司となるのは椿警視だ。身長一九〇センチはあろうかという巨漢だが、特徴はそれだけではない。父親は駐米大使を務めたこともある外務省キャリアで、母方の祖父は大物経営者という強大な力を持つ家庭の出身なのだ。本人はといえば、東大法学部を首席で卒業し、国家公務員Ⅰ種にトップ合格し、公安警察においても外事三課という対テロ防テロを任務とする部門で圧倒的な実績を上げ、エースとして活躍していた。エリート中のエリートなのである。
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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