前回までのあらすじ
エイリアンハンドシンドロームという奇妙な疾患に冒された岳士。片腕が何者かに乗っ取られたかのように勝手に動くのだ。しかし岳士には、亡くなった兄・海斗が腕に宿っているかのように感じられ、治療を拒絶し家を出る。ところが辿り着いた河川敷で刺殺体を発見し、犯人と目されることに。真犯人を探るうちに、事件の裏に危険ドラッグとそれを売りさばく集団「スネーク」の存在があることを突き止めるも、今度はスネークを張っていた刑事の番田に捕捉され、スパイになるよう持ちかけられる。首尾よくスネーク内部に食い込むが、ドラッグにはまり、抜け出せなくなっていく。そんな状況を見かねた海斗は、岳士を監禁するという荒技に出る。その甲斐あって禁断症状を乗り越えた岳士はついに真犯人と思しき「錬金術師」に対抗するための切り札を入手する。
第十三章
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「なに言っているんだよ……、お前……」
声が震える。なにを言われたか分からなかった。海斗の言葉の意味を脳が拒絶していた。
『だからさ、あのお姉さんが錬金術師、サファイヤの製造者にして早川を殺した黒幕なんだってば』
「そんなわけないだろ!」
岳士が部屋の壁が震えるほどの怒声を発すると、左手が顔の前にかざされる。からかうように五指がひらひらと動いた。
『なんで、そんなわけないって言い切れるんだい?』
「なんでって……」
岳士は必死に、沸騰している頭を冷まして思考を巡らせる。数十秒考え込んだあと、彼ははっと顔を上げた。
「錬金術師が隣の部屋に住んでいたなんていう偶然、あるわけがない! そうだろ!?」
『あのなあ』海斗は呆れ声で言う。『偶然のわけがないだろ。早川の部屋から僕たちが持ち出したパソコン。あれにはGPSがつけられていた。あのお姉さんは、僕たちがここに住みついたことを確認してから、隣の部屋に引っ越してきたんだよ。僕たちに接触して、サファイヤのレシピを取り返すためにね』
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