ネット時代のプロ作家とは?
佐藤 もう一つ、柳井さんに伺いたいのは、いまnoteや「小説家になろう」のような投稿サイトが盛んです。いろいろな人が書き手となれる状況の中で、プロとアマチュアの差はどこにあると思いますか?
柳井 究極的に言うと、プロとアマチュアに明確な差はない、その境目はグラデーションでしかないと思っています。
これまでは世間に認知されるという意味で、出版社から本が出るということが大きな線引きになっていました。ところが、いまはネットの無料サイトで連載して100万人の読者がいるアマチュアがいる一方で、本は出るけれども1万人も読者がいないプロがたくさんいる。そのアマチュア作家が連載しているサイトが、PVでお金を払うようになった瞬間に、動く金額がガラリと変わって、一気にプロを追い越してしまう。
実はそういう問題はすでに顕在化していて、ユーチューバーがそうなんですね。テレビに出ている人たちが有名な芸能人だったのが、YouTubeというものが出てきて、従来のルートを通らずに有名になってお金も稼げる人たちが現れた。そのときに、プロとアマチュアとの違いはどこなのか。さらに、ユーチューバーでもお小遣い程度のお金を稼ぐだけの人もいれば、それで生活している芸能人顔負けの人までいろいろいるわけです。
小説の世界もそういう風になっていくとしたら、どこでプロとアマの線引きをするかというのは難しい問題でしょうね。
話を小説に限定すると、私はプロとアマの線引きは、現状、その作者がどのルートから出てきたかで決まっているように思います。私自身が松本清張賞に応募して賞を取れずにデビューした、半人間半妖怪みたいな立場なので(笑)。
そこから見ていて思うのは、小説家の世界はある種の会員制サロンだと思うんです。選考委員という人たちがいて、その人たちから「うちのサロンに入るのを認めるよ」と言われた人たちがサロンのメンバーになって出版社から本を出すという、小説家サロンのようなものが成立している。そのサロンの住人がプロで、そうでない人たちがアマチュアということになっていると思います。
これまでのネットがなかった時代にはそういうルートしかなかったのが、別のルートが増えてくるとプロとアマチュアの間の垣根はどんどん低くなっていき、既存のルートが持つ権威もだんだん薄らいでいくのではないかというのが私の考えです。
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