司会 プロとアマチュアといった場合、売るために書くのがプロで、売れても売れなくてもいいから好きなものを書くのがアマチュアという考え方もあると思います。ただ、書きたくもないことを、ただ売るためだけに書くのが小説家のあるべき姿なのかと言われると、そこは難しいところです。
売れるものが書きたいものと合致すればこんなに幸せなことはないわけですが、柳井さんもそういったことで悩まれることもあるかと思いますが、いかがでしょう。
柳井 書きたくないのに書いてくださいといわれるくらい需要があればいいんですけど(笑)。
矢部 ある時期から作家の先生方が書店にいらっしゃることが多くなって、ある先生から「次にどんな小説が読みたいですか?」と聞かれて、「じゃあ例えばこんな作品をと言えば、書いていただけるんでしょうか」と言ったら、「そうです、需要があればどんな小説でも書きます」と(笑)。ある意味プロだなと思いましたが、反面、それでいいのか、これを書かざるを得ないといった心持はなくていいのかと思ったりしたのですが。
柳井 書く方の立場からいうと、何を書いても自分というフィルターを通すと自分のものになりますから、必ずしも書き手の主体性が損なわれるわけではないと思います。何の話にするかというのはマーケティングの問題で、自分の作品をより多くの人に読んでもらうにはどういうユーザーインターフェイスを選ぶかだと思います。だからいろいろな人に話を聞きますし、その中で実際に読者に届きそうで、かつ自分も書くモチベーションがある題材を探すということになります。
司会者 そういうヒントが欲しいというのは、作家さんにもあるようですね。新しい出会いを求めている(笑)。
矢部 作家の先生方が書店に来て作品についてお話をしていただけることで、売る側としても仕掛けるためのフックが増えるし、モチベーションも上がります。
撮影:深野未季
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