立場や境遇を越え、背中の疵で繋がる足軽兵と侍。別々の時を経て再び交わった時に感じた怒りと虚しさ。それでも信じた憧れという想い。この一篇に込めた想いこそが本書の肝なのだろう。
様々な立場の人物が描かれているが、それぞれが同じく思い悩む、武士としての生きざまと誇りと覚悟を感じ取ってほしいし、それは戦国の世も今の世も変わりないのではないか? ということを著者は伝えたかったのだろう。
一方で、戊辰戦争という歴史の上に育った会津出身の著者は、芦名家には「滅びの美学」とは別の選択肢があったのではないかと訴えたかったのでは? とも思いながら読み終えたのは、深読みだろうか。
『謀反』『報復』『忠誠』『憧憬』『慢心』『代償』という六つの心の動きに着目した裏には、著者のそんな狙いが隠されていたのではないだろうか。
最後に書下ろしとして収録された「政宗の代償」については、読み手によって違う印象を与える仕組みとなっている。あえて、ここに小田原攻め遅参と秀吉と政宗の逸話を加えた意味は、歴史とは「勝者」と「敗者」を同時に生み出しながら紡がれてきたものということを伝えたかったのではないだろうか。
こちらもおすすめ
プレゼント
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。