- 2019.12.28
- インタビュー・対談
冬休みの読書ガイドに! 2019年の傑作ミステリーはこれだ! <編集者座談会>
「オール讀物」編集部
文春きってのミステリー通編集者が2019年の傑作をおすすめします。
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#エンタメ・ミステリ
『人格転移の殺人』プラス『七回死んだ男』
司会 では海外編に行きましょう。1位はアンソニー・ホロヴィッツの『メインテーマは殺人』(創元推理文庫)ですね。
N 2018年の1位に選ばれた同じ著者の『カササギ殺人事件』(創元推理文庫)と同様、クラシックな本格ミステリーを現代風に仕立てた小説なんですけど、作中作という飛び道具を使った『カカサギ~』と違って、今度はもっと正統派の直球勝負。著者のホロヴィッツ本人がワトソン役として登場し、元刑事の名探偵とコンビを組んで殺人事件の謎を解く。この名探偵が本当に嫌なヤツで(笑)。作中、ホロヴィッツがスピルバーグ監督とミーティングする場面があるんだけど、探偵は「そんなのどうでもいいだろ!」って、ホロヴィッツを捜査に連れてっちゃう。英国ミステリーの伝統である「嫌な名探偵」の系譜に属する作品で、肩の力を抜いて、楽しく読めるミステリーです。
司会 海外の2位が文春の本、『イヴリン嬢は七回殺される』(文藝春秋)ですね。
N 森の中の館でイヴリン嬢の婚約発表パーティが開かれるというので、怪しいお客が集まってくるという設定です。なぜか全ての記憶を失った主人公もそこに加わり、舞踏会に参加しているうちにイヴリン嬢が真夜中に殺される。「事件を推理して犯人を捕まえないと、お前は同じ1日を延々と繰り返すことになる」と謎の男に告げられ、実際に主人公は意識を失うたび同じ日の朝に戻る、というタイムループものなんですが、そこにさらに、目を覚ますたびに違う人物の肉体に意識が移っているという設定まで乗っかっている。
O ほう、面白そう!
N いわば人格転移をしながらタイムループするので、真夜中にイヴリン嬢が死ぬ仮面舞踏会の1日を、いろんな人物の視点から何度も見、何度も推理することができる。全部で8回のチャンスがありますよ、という趣向のミステリーなんです。面白いのが、人格転移をして粗暴なヤツのなかに入っちゃうと、もとの男の頭が悪いので、思うように推理ができなかったりする(笑)。体の弱いおじいさんに入っちゃうと、うまく身体を動かせない制約もある。しかも、どうやらもうひとり、自分と同じようなことをしながら推理をしている人物がいるらしい。競争相手がいるわけですよ。
一同 おおー。
N 新本格ミステリーファンの方には、西澤保彦さんの『人格転移の殺人』プラス『七回死んだ男』といえばわかりやすいかもしれません。それをイギリス人が書くとこんなヘンテコな話になるんです。ややこしそうに見えて、実は非常にシンプルなトリックがあり、スパッと謎が解けるつくりにもなっています。楽しいですよ。
I 自社の本ながら未読なので、お正月に読もうと思います。
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