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冬休みの読書ガイドに! 2019年の傑作ミステリーはこれだ! <編集者座談会>

冬休みの読書ガイドに! 2019年の傑作ミステリーはこれだ! <編集者座談会>

「オール讀物」編集部

文春きってのミステリー通編集者が2019年の傑作をおすすめします。


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

予告される叙述トリック

雷鈞『黄』(文藝春秋)

司会 9位には中国の作家、雷鈞さんの『黄』(文藝春秋)が入りました。

 数年前、中国で6歳の男の子の両目が木の枝でくりぬかれる悲惨な事件が起きました。現実の事件は容疑者と疑われた男の子の伯母が自殺してしまい、うやむやのまま終わっているんですけれど、『黄』はこの実際の事件を下敷きにして、著者なりの大胆な推理を展開し、ひとつの結論を提示しています。ここがまず読みどころですね。さらに、冒頭1ページ目にいきなり「この小説には一つ叙述トリックが含まれている。ご注意を」と書かれている。当然、読者は注意して読むわけですけど、「これかな」と思うとほぼ確実に作者の術中にはまっていて(笑)、まったく思いもよらないところにトリックが仕掛けられているんです。

 中国人のアイデンティティ問題にまで深く踏み込むことで初めて可能となる大胆なトリックだったので、驚きました。この10年間、島田荘司さんが中心となって華文ミステリーを紹介し、陳浩基さんの『13・67』(文藝春秋)をきっかけに一気に読者が広がった観があります。雷鈞さんの『黄』も島田荘司推理小説賞の受賞作ですね。

 アジアでは日本の新本格ミステリーがよく読まれていて、島田荘司さん、綾辻行人さんらに影響を受けた書き手がどんどん登場しています。社会派ミステリーやハードボイルド小説だとどうしても社会問題、政治問題に触れないわけにはいかなくて、中国では書きにくいのですが、本格ミステリーはそれらに比べると書きやすいようです。

 今回のランキングでも、陳浩基さんの『ディオゲネス変奏曲』(ハヤカワポケットミステリ)が7位に入っていますし、SFの話題作、劉慈欣さんの『三体』(早川書房)は4位にランクインしていますね。

 『三体』は面白いですよ! 小松左京の『果しない流れの果に』とか『継ぐのは誰か?』を思わせるエンタメになっていて、いま、中国SFは成熟してきているのかなと感じます。中国政府もSFをかなり後押ししているみたいですし。

 名前の挙がった島田荘司さんについて補足しておくと、なんと2019年、吉敷竹史シリーズの新刊『盲剣楼奇譚』(文藝春秋)が出ました! 『涙流れるままに』以来、実に20年ぶりです。ファンには堪らないことに、奥さんの加納通子も出てきます。

【科学捜査の天才vs.ダイヤモンドキラー】

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