「執筆室に羽毛布団を入れてくれるそうなのですが、アレルギーは大丈夫ですか?」

 担当編集氏からそうメールで尋ねられた時は「嘘やん」と思った。しかし次に執筆室に入ると本当にあたたかな新品羽毛布団がベッドに鎮座ましましていた。

 私は恐れおののいた。

 羽毛布団を導入してくれたえらい人に会った時には、もはや平身低頭の勢いでお礼を申し上げるしかなかった。何せ、水道光熱費を支払わないとまずい勢いで執筆室に常駐しているのだ。どの口で愚痴などほざけたものかと冷や汗をかいていたのだが、ここで隣にいた担当編集氏が笑顔でこう言い放った。

「どうせなら、次はウォシュレット付きのトイレにしてくださいよ」

 おいおいおいおい、流石にそこまでわがままは言えんじゃろうが! 恩知らずの上に厚かましいとか思われたらどうしてくれる!

 大いに焦る私に対し、えらい人はのほほんとこう言った。

「あ、そっちも困っているの? じゃあ入れちゃおうか」

 え……なんて優しい……。

 そして現在、ピカピカで温かいウォシュレット付きの便座に交換されている。

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