- 2020.06.15
- 書評
『呪われた町』こそ、御大キングの真正(神聖)処女長編だ!
文:風間 賢二 (文芸評論家)
『呪われた町 上 下』(スティーヴン・キング)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
しかし、キャラハン神父のことがたえず念頭から離れない。そこでキングは、かれを他の物語に登場させることにした。キング・ワールドの枢軸〈ダークタワー〉の第五巻『カーラの狼』からシリーズ最終巻の第七巻『暗黒の塔』まで。キャラハン神父は〈旅の仲間〉のひとりとして大活躍する。ことに『カーラの狼』は、本書の実質上の続編の趣がある。キャラハン神父がロットを去ったのちの放浪の日々に出会った吸血鬼のさまざまなタイプが解説されたり、作家ベンとマーク少年のその後の消息にも触れられている。興味のある向きは、ぜひ一読を。
最後に本書の映像化作品について。現在までに二度TVドラマ化されている。最初は一九七九年、『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパーがメガホンを取った『死霊伝説』。二度目は二〇〇四年、『アビス』や『バックドラフト』で撮影監督を務めたミカエル・サロモンの監督作品『死霊伝説 セーラムズ・ロット』。残念ながらどちらも評価はよくない。とはいえ、トビー・フーパー版は今日カルト作品化している。
カルト作品といえば、ホラーのジャンルでは『悪魔の赤ちゃん』がその種のひとつにあげられるが、そのラリー・コーエン監督がトビー・フーパー監督版『死霊伝説』の続編として、一九八七年に『新・死霊伝説』を勝手に制作している。
七九年版も〇四年版も原作をかなり脚色した、あらすじ紹介的な作品に仕上がっていたのが不評だったが、期待できそうなニュースが昨年発表された。三度目の映像化が決定したのだ。今回は大スクリーンでの公開だ。しかも、『ソウ』や『死霊館』シリーズで知られるジェームズ・ワンが製作、そのワンと相性のよい脚本家(『死霊館』や『IT』)として著名なゲイリー・ドーベルマンが脚本・監督を担当。他に製作陣として、『IT』のメンバーが加わるとのこと。今のところ配役は未定だが、鶴首(かくしゅ)して完成を待つ。
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