- 2020.06.15
- 書評
『呪われた町』こそ、御大キングの真正(神聖)処女長編だ!
文:風間 賢二 (文芸評論家)
『呪われた町 上 下』(スティーヴン・キング)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
一七八九 十月二十七日、フィリップ・ブーンがまだ存続していた邪教集団に拉致されるが、ロバートがそれを追って教会に行くと、そこにジェームズと〈蛆〉がいる。そのあとでふたりの兄弟、およびジェームズやカルト教団の信者たち、そして〈蛆〉がどうなったのかは不明。一夜にしてジェルーサレムズ・ロットはもぬけの殻となり、ゴーストタウンと化したからである。
一八五〇 ロバートの孫がチャペルウェイトに移住し、そこで一族の歴史が綴られた文書を偶然見つける。同時に、〈司祭の秘密の場所〉の住民たちのかれに対する態度が自分の先祖の忌まわしい出来事を悟らせる。その年の十月二十七日、件(くだん)の〈蛆〉とゾンビのようになったジェームズと出会う。そいつらはジェルーサレムズ・ロットの見捨てられた教会の地下に潜んでいたのだ。
一八九六 この頃までには、ロットの歴史を覆っていた邪悪な影はほとんど忘却されるか、囁かれるていどのものとなり、ゴーストタウンに新たな住民が定着した。この年、以前はポートランド・ポスト・ロードとして知られていた本通りは地元の政治家にちなんでジョイントナー・アヴェニューと改名される。
一九二八 ニューイングランドのトラック運送会社の社長(その実態はマフィアの殺し屋)ヒューバート・マーステンが妻のバーディとともにセイラムズ・ロットに隠居する。もちろん、〈ファミリー〉とのつながりは切れていない。
一九三九 夏のある日、不可解なことに、突然ヒューバートは妻を射殺したのちに自ら縊死(いし)する。ヒューバートは生前、ヒトラーの台頭した時期のドイツで暮らしていた謎の男と関係があったことが、のちに判明する。その謎の男の名は、カート・バーロー。
一九五一 九歳のベン・ミアーズは度胸試しのために、幽霊屋敷と噂されるマーステン館に侵入し、二階で首を吊っているヒューバート・マーステンの幽霊を目撃。その体験がトラウマとなる。
一九七一 十月のある日、ブーン一族の末裔、ジェームズ・ロバート・ブーンがチャペルウェイトに住居をかまえる。それもかつての邪教集団の教会が建っていた付近に。
一九七五 九月五日にベン・ミアーズは少年時代に四年間生活したロットに戻ってくる。成長して作家になったかれは、新作を執筆するために長期滞在を考え、戯れにマーステン館を借りて宿代わりにしようかと思うが、すでにふたりの謎のヨーロッパ人が購入して住むことになっていた。
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