阿部 お久しぶりです。直接お会いするのは2月以来なので、半年ぶりですね。『楽園の烏』の装画、とても評判がよくて、いろんな人に格好いいねって言ってもらってるんです。
今回は名司生さんに、既刊文庫6巻の新カバーと文庫『烏百花』の装画、単行本『楽園の烏』の装画と、合計8作もお願いすることになったのですが、どれもすごく精密で! 時間とか労力とか……とにかく大変でしたよね。
名司生 もう描くしかない! っていう感じでしたね。このお仕事には、そのくらいの熱量が必要だと思ったので。
阿部 こんなに一気にお仕事をお願いすることはなかなかないので心配だったのですが、出来上がってきた作品はどれも期待を上回っていました。本当にありがとうございました!
――名司生さんは、八咫烏シリーズの新章スタートにあたり、阿部さんが自ら「発見」したイラストレーターさんだったそうですね。そのあたりからお話を伺えますか?
阿部 まず、新章が始まるにあたって、『楽園の烏』はこれまでの作品とはかなり異なる雰囲気になるだろうと思っていました。シーンは現代の日本から始まりますし、作品のトーンもこれまでと違います。そこで、八咫烏シリーズをさらに外側に広げていくために、装画を描いてくださる新たなイラストレーターの方を探すことになりました。
お願いするとしたらアナログの絵を描く方がいいなと思っていて。水彩とか、風景画とか、かたっぱしからネット検索をかけて見ていたのですが、だんだん分かってきたのは、絵がうまいのと装画として素晴らしいのは違うんだなということ。
もうひとつ、もしこれから一緒にお仕事をするとしたら、装画をやりたいと思ってくださる人がいいとも気づいたので、途中から「東京装画賞」とか、装画のコンテストを見るようになりました。そうしたらそのなかで「すごくよくない?」と思ったのが名司生さんの絵だったんです。
名司生 東京装画賞で入選した『夜のピクニック』の絵を見てくださったんですよね。
阿部 はい。光の描き方がすごく印象的で。でもあの作品はデジタルだったんですよね。
名司生 そうです。私が描く絵はほとんどがアナログなんですが、あれは時間の関係でデジタルでした。
阿部 デジタルか、と思ったんですけど、ピンときた感覚を捨てられず。お名前で検索してTumblrの作品を拝見したんです。そうしたらアナログの絵も描いていらして! しかもファンタジックなイラストも『楽園の烏』冒頭シーンにありそうな路地裏の絵もあって、めちゃくちゃ素敵だし、これは決まりだ! とひとり興奮しました。