阿部 最終的には(1)が採用になったのですが、私がすごく好きだったのが(4)。辻という場所の切り取り方もいいし、空気感がすごく作品にマッチしていて、ラフの段階なのに完成度が高すぎる……。
八咫烏チーム内でも推しが分かれていましたね。(1)もいいけど、私、これも好き! というような大プレゼン大会が始まりました。
6パターンどれも素敵だったんですけど、用途によって求められる絵の性質は変わってくるんですよね。単行本なのか文庫なのか、あるいはポスターやポストカードだったら……最終的には単行本の装画として(1)がいちばんいい、と満場一致で決まりました。
名司生 そのあたりの感覚が私にはわからなかったので、描いたものをぜんぶお渡しして、選んでもらおうと思っていました。
阿部 こちらからすると選び放題、なんと贅沢な悩みでしょう!
――こうして装画のラフ(原型)ができてきたわけですが、このアイデアがどうやって出てきたのか、名司生さんにお聞きしたいです。
名司生 『楽園の烏』のテーマが「対比」であるような気がしたので、現代の視点と山内の視点を意識して、表紙と裏表紙で構図が反転するようなイメージで描いていきました。表紙でも現代日本の路地裏と、空に逆さまに浮かんだ山内、とひたすら反転していった感じですね。
阿部 テーマを掴んでいないと、この発想にはなってこないですよね……。さらに私の要望として、裏表紙のほうに、もう少し異界感、山内の雰囲気を出してほしいとお伝えしました。それですぐに返ってきたのが、これ!
確か、これ修正をお願いしてから1日後くらいに送られてきたんですよ。あまりにも的確で早いので、白目剥きながら「もうきた……嘘じゃろ……」みたいな。
名司生 修正に関しては、もう指示していただいた通りに描いているだけなので。
阿部 いやいや簡単に言いますけど、それがどれだけ大変なことか!
名司生 じゃあ、もともと感性が近いということで。私が言うのも恐れ多いですが(笑)。
阿部 そう言っていただけるとありがたい限りです。