コラム・エッセイ

作家の羽休み――「第18回:ブロッコリーの実力」

阿部 智里

作家の羽休み――「第18回:ブロッコリーの実力」

 皆さんはブロッコリーをどうやって食べていますか?

 私はつい最近まで、茹でてマヨネーズまみれにするか、クリームシチューに放り込む以外に食べ方を知りませんでした。

 うちの父がブロッコリーが苦手だったこともあり、幼少期から食卓に上ること自体が稀だったのです。私自身、食べられないわけではないのですがそんなに好きという感じでもなく、「栄養が豊富なんだから好き嫌いしないの!」と般若顔になった母を前にして、父と取り分を(どちらがより少なく食べるかで)争うこともしばしばでした。

 ところがここ最近、帰省する度に私と父はブロッコリーを奪い合っております。

 まさかこんな日が来るとは夢にも思っていなかったのですが、父の友人で菜園を営んでいるAさんが、さらりととんでもないことを教えてくれたのです。

「ああ、ブロッコリー? あれ、天ぷらにするのが一番美味しいよね」と。

 ブロッコリーの天ぷら!? そんなの見たことも聞いたこともないぞ!

 初めて聞いた時は味が全く想像できず、失礼なことに「美味しい」という言葉を疑いまくっていました。何というか、ブロッコリーは水気が多いし、青っぽい臭いがするし、油と相まってぐちゃっとした感じになるような気がしていたのです。

 しかし母は、頑なに「嫌い」だとは認めないけれど明らかにブロッコリーを押しつけあっているいい歳をした夫と娘に業を煮やしていました。話を聞いた翌日には、早くもブロッコリーの天ぷらが阿部家の食卓に並んだわけです。

 戦々恐々としながらテーブルについて、該当のブツを初めて見た印象は、思ったよりカラッとしてるな、というものでした。

 母がやや長めに揚げていたこともあり、衣はキツネ色というよりも茶色みを帯びた琥珀色で、青臭さは全く感じず、ただただ香ばしさが際立っていました。

 頂きますと手を揃え、それをおそるおそる口に運んだ私は、衝撃を受けました。

 嘘やん! こ、これがブロッコリー!?

【次ページで 阿部家のブロッコリーの天ぷらをご紹介】

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