私はお酒が好きですがお酒があんまり飲めません。
こう言うと「ええ? 何それどういうこと?」と困惑されることが多いのですが、正確に表現をすると、「お酒の味は好きだけど、アルコール耐性がない」のです。
一族郎党ことごとくお酒に弱いので、間違いなく遺伝であると思われます。小さい頃、うっかり洋酒入りのゼリーを食べて真っ赤になってしまったこともあれば、ラムレーズン入りの牛乳を飲んで心臓をドンドコいわせ、母をめちゃくちゃ不安にさせてしまったこともありました。一方で、同時期に一番好きだったオヤツは祖父母の家のお茶請けに紛れていたマグロ珍味です。ほら、あの、金と銀の紙に包まれた、甘じょっぱくて四角いアレ。今でも塩辛にシャケトバ、ばくらい、ビーフジャーキー、生ハム、サラミなど、見事に塩気の多いおつまみ系の珍味が好物でして、アルコールには弱いくせに、普通に酒飲みの舌なのだと思います。
そんな私が初めてちゃんと飲酒したのは、二十歳を過ぎて、初めて気の置けない高校時代の友人達と前橋駅前の白〇屋に行った時のことです。皆、自分の許容量を探りながらの飲酒だったので、一気飲みするでもなく、半分ジュースのようなカクテルをちびちび舐めるようにして楽しんでいました。
私は上記の理由から「十中八九弱いけれど酒自体には興味津々」といった感じでして、試しにと、牛乳のたっぷり入ったカルーアミルクを注文しました。
結果、どうなったか。
――笑いが止まらなくなりました。
笑い上戸なら誰にも迷惑かけなくて良かったじゃんね、と思ったそこのあなた! 重度の笑い上戸はやばいですよ。別に、何かを面白がっているわけでも楽しんでいるわけでもないのに、勝手に横隔膜が震え続けるのです。幼稚園生の頃、泣き過ぎて呼吸困難になった時のことを思い出すレベルでした。しかも意識は素面というか、非常にはっきりしており、「え? なんで私笑ってんの?」と自分で自分にドン引きしていましたし、周囲の友人達がドン引きしている様子もはっきり認識していました。
「えええ、これどうしたらいいの?」
「阿部、しっかりしろ。こっちが何言っているか分かる? 阿部ェ!」
「待って待って、店員さん、ジョッキでお水ください!」
てんやわんやの挙句、確かお冷を含むノンアルコールの飲み物を5、6杯ほど飲んで、ようやく笑いがおさまったのでした。
それ以来、友人達は一緒に食事に行く際にも、私にお酒を飲ませることをめちゃくちゃ警戒するようになってしまいました。私も反省しまして、それ以来細心の注意を払い、一気にお酒を飲まないよう気を付けるようになりました。