- 2021.01.09
- インタビュー・対談
ステイホームのお供に! 2020年の傑作ミステリーはこれだ!【海外編】 <編集者座談会>
「オール讀物」編集部
文春きってのミステリー通編集者が2020年の傑作をおすすめします。
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
【ディーヴァー新シリーズの魅力】
司会 年の瀬になるとジェフリー・ディーヴァーの新作を楽しみにしている方も多いでしょう。2020年には新シリーズが始まりました。『ネヴァー・ゲーム』(文藝春秋)について、担当のNさんからお願いします。
N おなじみリンカーン・ライムシリーズは、脊髄損傷で身体が動かなくなった天才捜査官の推理を楽しむ、いわば安楽椅子探偵モノなんですが、ライムとは対極的に、今回の新主人公コルター・ショウはとにかくあちこち全米じゅうを動きまわります。失踪人探しの専門家で、依頼を受け、行方不明者、保釈中に逃亡した犯人などを見事に探し出し、懸賞金を得ることを生業にしているキャラクターなんですね。僕はこれ、ディーヴァーによるリー・チャイルドへの返答みたいなものかなとひそかに思っていまして――。
司会 ほう、どういうことでしょう。
N アメリカの人気シリーズって、ニューヨークやロサンゼルスなど、舞台の土地を固定することが多いんです。ところがリー・チャイルドの描くジャック・リーチャーは家をもたず、住所不定の放浪者で、『葬られた勲章』はたまたまニューヨークが舞台でしたが、たいてい日本人がよく知らない田舎に出没しては事件に巻き込まれるのがお約束。他方、ディーヴァーのコルター・ショウも、キャンピングカーで全米中を旅しており、かつてお父さんからサバイバル術を叩き込まれ、ロッククライミングが得意で、山の中で人の痕跡を追うのが上手かったりもする。いわば流れ者的な、放浪の名探偵というところが通底しているんです。ジャック・リーチャーは世界的な大ベストセラーシリーズなので、ディーヴァーが意識していることは間違いない。同じ試みをディーヴァー流にやるとこうなるよっていう返答がコルター・ショウじゃないかなと個人的には思っているんです。
『ネヴァー・ゲーム』は、シリコンヴァレーで行方不明になった19歳の女子大学生を探してほしいという依頼から始まり、やがてビデオゲームの絡んだ派手な連続誘拐殺人へと話が広がっていきます。もちろんディーヴァーらしいサスペンスやドンデン返しは健在。アメリカではすでに2作目も出ていて、ディーヴァーはかなり本腰を入れてこのシリーズを続けていくみたいなので、今後に注目ですね。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。