彼女はイブニングに自分の原稿が載るたびに第〇話「休んだ日にいろいろ決められてすごく嫌」とか、第〇話「こんな上司は嫌だ」とか勝手に変な題名を付けて宣伝しているのですが、以前、若宮にこき使われる雪哉の回を「劣悪! パワハラ無賃労働」と題していたことを思い出したのです。
これだと思いました。
「もし、八咫烏の彼らがごくごく普通の人間だったら……?」
「はい?」
「雪哉の受けたパワハラ、現代だったらこんな感じかも、というのをちょこっと書くというのはどうでしょう」
「それは素晴らしい」
「※ただしこの物語は八咫烏シリーズとは一切関係ありません、と書くのを忘れずにですね。あくまで八咫烏の彼らではなく、私が『あいつら人間だったらこうなんじゃない?』と勝手に想像した姿をコメディとして書いたら笑えるんじゃないかと思うんですが……さすがにふざけすぎでしょうか?」
「とっても良いと思います。して、それで書くとしたらお原稿はいつ、もらえますか?」
「こんなふざけたのでいいなら今日中に送れますよ」
そして、わたしには珍しく帰宅してすぐに書いて送った原稿が、オマケの両面ポストカードのB面に載ることになったのです。
もともと、A面にはカッコイイ若宮と雪哉の絵が載るはずだったのですが、私と漫画編集さんがはっちゃけてしまったので、松崎さんは「私は悪くないですからね!?」と叫びながら、ノリノリでそのイメージイラストを描き下ろしてくださいました。あの頃の彼女、めちゃくちゃ忙しかったはずなんですけどね。いや、仕事を増やしてしまい申し訳なかったです。表には出ないのに設定画まで送られてきた時には、作品への飽くなき探求心に感動すら覚えました。
そんなこんなで、初版のオマケに付くポストカードに載っているのは、私が「八咫烏の彼らって、人間だったらこんな感じなんじゃない?」と思ったというセルフパロディ小話と、松崎さんの描かれた素晴らしいイメージイラストです。例によって、八咫烏シリーズ本編とは一切関係ない超短い小話ですが、もしよろしければ手に取って頂ければ幸いです。
阿部智里(あべ・ちさと) 1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く著書「八咫烏シリーズ」は累計130万部を越える大ベストセラーに。松崎夏未氏が『烏に単は似合わない』をWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)ほかで漫画連載。19年『発現』(NHK出版)刊行。現在は「八咫烏シリーズ」第2部『楽園の烏』を執筆中。
【公式Twitter】 https://twitter.com/yatagarasu_abc
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